日本大百科全書(ニッポニカ) 「カーシ」の意味・わかりやすい解説
カーシ
かーし
Khasi
インド、メガーラヤ州のオーストロアジア語族モン・クメール語派民族。ブラマプトラ川の南、アッサム西部のカーシ丘陵およびジェインティア丘陵に住み、ジェインティア(シンテン)、カーシ、ワー、ボーイ、リンガムの五つの下位集団に分かれる。人口は29万5224(1951)。中部インドのムンダの人々と同様に、言語がオーストロアジア語族に属する点が、チベット・ビルマ語系とインド・ヨーロッパ語系の多い周辺民族のなかで特徴的である。母系制が維持されてきたことで知られる。平坦(へいたん)地では水稲耕作が狩猟をなし、山岳部の斜面ではトウモロコシ、雑穀、陸稲、豆類の焼畑耕作が行われてきた。19世紀前半にイギリス人のもたらしたジャガイモ栽培が加わった。定住村落が最頂部から遠くない窪地(くぼち)につくられ、村長が選出されるが、重要な決定は成年男子の合議による。居住形態は妻方居住と独立居住が大半を占め、伝統的には末娘が母親の財産を相続した。宗教は、基層をなす男女一対の神への信仰に加え、ヒンドゥー教、イスラム教が入り込んでおり、イギリス統治以降はキリスト教への改宗者が出ている。巨石建造物は彼らの古い信仰形態を物語る遺物である。
[横山廣子]