日本大百科全書(ニッポニカ) 「カーマーヤニー」の意味・わかりやすい解説
カーマーヤニー
かーまーやにー
Kāmāyanī
インドのヒンディー語詩人ジャエシャンカル・プラサード作の叙事詩。1936年刊。浪漫象徴詩風(チャーヤーワード)期の最高傑作と称せられる。大洪水にひとり生き残った原人マヌがカーマーヤニー、すなわちカーマの娘シュラッダーŚraddhāの助け、導きにより知・情・意の調和による喜びを得る経過を描き、15章からなる。孤独なマヌはシュラッダーと結ばれて心豊かな生活を始めるが、この生活にも飽き足らず妊娠中の妻を捨てて家を出る。やがて知、物質主義の女王イラーのもとに至り統治を任されるが、権力におぼれて人民の反抗にあう。息子を連れてマヌを捜し求めてきたシュラッダーは、息子をイラーのもとに残し知と心の調和を説き、自分ひとりでマヌを訪ね、調和による喜びをみいださせる。マヌは自分を訪ねてきたイラー、息子および人民に対し、人類は一家族と説く。
[土井久弥]