人民(読み)じんみん

精選版 日本国語大辞典 「人民」の意味・読み・例文・類語

じん‐みん【人民】

〘名〙 国家を構成し、社会を組織している人々。ふつう、支配者に対する被支配者、官位のない一般の人々をさしていう。たみ。万民。蒼生。にんみん。
※続日本紀‐慶雲元年(704)七月甲申「亟聞。海東有大倭国。謂之君子国。人民豊楽、礼義敦行」
将門記(940頃か)「恒に人民の財を掠めて従類栄えと為す」 〔史記‐孝文本紀〕

にん‐みん【人民】

〘名〙 国家を構成し、社会を組織している人々。じんみん。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
曾我物語(南北朝頃)二「にんみんこぞりて囲繞(ゐねう)す」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「人民」の意味・読み・例文・類語

じん‐みん【人民】

国家・社会を構成している人々。特に、国家の支配者に対して被支配者のこと。国民。
国家の基盤をなす政治的主体としての民衆
[類語]国民同胞民草蒼生蒼氓臣民赤子万民大衆民衆公衆たみ庶民平民常民市民勤労者・生活者・一般人市井しせいの人世人せじん俗衆群衆マス

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「人民」の意味・わかりやすい解説

人民 (じんみん)
people

広い意味では国家の構成員を指し,国民と同義であるが,狭い意味では国民のなかから既存の支配層を除いた部分,すなわち被支配層としての国民を指す。こうした対比でみれば,国民が支配層も含めた全体の一体性を強調する概念であるのに対し,人民はむしろ被支配層の連帯と解放を重視する概念として用いられることが多い。〈人民主権〉や〈人民民主主義〉などの用例は,いずれもこれまで抑圧されてきた被支配層の解放によって,彼らが真の連帯を実現するために,主権民主主義を用いるとの意味を含んでいる。その意味で,人民はマルクス主義者など左翼勢力に用いられることが多い。ただ,アメリカ合衆国では単一民族を基盤とした国民の観念が成立せず,しかも平等主義的傾向が強力であるため,左翼的伝統の欠如にもかかわらず,人民が国民の意味で用いられた。リンカンの〈人民の,人民による,人民のための政治〉は,その典型的な用例。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「人民」の意味・わかりやすい解説

人民
じんみん
people 英語
Volk ドイツ語
peuple フランス語

このことばには、歴史・社会の状況に応じてさまざまな意味が与えられてきたが、今日では一般に、特定の社会ないし国家を構成する人々、とくに、支配者に対する被支配者を、社会的地位・階級・財産にかかわりなく人民と称している。語源的にはラテン語のpopulusに発し、本来は、政治支配を行う貴族に対立する存在を単に人民と称し、社会ないし国家を構成する「内的」な存在としてはかならずしもとらえられていなかった。社会や国家を構成する「内的」な存在として、今日のようにとらえられるようになったのは、フランス革命後のことである。

 フランス革命時においては、いわゆる小市民層・労働者・農民などを人民と称していたが、その後徐々に、社会や国家を構成する被支配者を広く人民と称するようになった。さらにそれに伴い、被支配者が支配者に対し究極的には統制を加えることができるという考え、いわゆるリンカーンの「人民の、人民による、人民の政治」という近代デモクラシーの人民主権の考えが確立するのである。一般には、人民が国家との間で法的な関係をもち、国家の支配の対象であるのみならず、国家の積極的な構成員となるとき市民と称している。さらに、人民が一体感に目覚め、共通運命をもっていることを認識する存在、つまりナショナリズムに目覚めた存在になると、国民と称している。

[谷藤悦史]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

普及版 字通 「人民」の読み・字形・画数・意味

【人民】じんみん

たみ。〔孟子、尽心下〕孟子曰く、侯の寶は三。土地・人民・事なり。珠玉を寶とするは、殃(わざは)ひ必ず身にばん。

字通「人」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

百科事典マイペディア 「人民」の意味・わかりやすい解説

人民【じんみん】

一般に,支配者との対抗関係で把握(はあく)された場合の民衆をさす。左翼諸勢力の用語として,その主体的性格の意味を強調し,消極的・受動的存在としての大衆と区別して多用される。また共和国の構成員をさす言葉としても用いられる。
→関連項目国家市民

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「人民」の解説

人民

明治時代の日本の新聞。自由党・政友会系。1902年2月、「日刊人民」から改題して刊行を開始。1905年、「人民新聞」に改題。記者として茅原華山などが在籍。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人民」の意味・わかりやすい解説

人民
じんみん

国民」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の人民の言及

【大衆】より

…仏教用語では,多数の僧侶,多数の僧兵,すべての人間,すべての生物を意味している(読みは,だいしゅ,だいす,たいしゅう)。大衆の概念は,一方では〈人民people〉という概念と同一視され,他方では〈愚民foule〉というマイナス・シンボルと同一視される。マルクス主義において大衆とは,価値の創造者,歴史の主体的存在としてみなされ,社会主義革命の担い手となる労働者,農民を意味する。…

【大衆】より

…仏教用語では,多数の僧侶,多数の僧兵,すべての人間,すべての生物を意味している(読みは,だいしゅ,だいす,たいしゅう)。大衆の概念は,一方では〈人民people〉という概念と同一視され,他方では〈愚民foule〉というマイナス・シンボルと同一視される。マルクス主義において大衆とは,価値の創造者,歴史の主体的存在としてみなされ,社会主義革命の担い手となる労働者,農民を意味する。…

【平民】より

…(1)古代律令制下で位階官職をもたない一般人民をさした語。百姓,公民,良民と同様な意味で用いられた身分呼称であった。…

※「人民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android