内科学 第10版 の解説
ガストリン - コレシストキニンファミリー(消化管ホルモン)
a.ガストリン(gastrin)
ガストリンは胃酸分泌や細胞増殖を促進する作用をもつ.胃酸分泌は脳相,胃相,腸相に分けられる.脳相では,視覚や嗅覚により胃壁在神経終末からアセチルコリンやガストリン放出ホルモンが放出され,G細胞からガストリンが分泌される.胃相では,食物による胃壁への物理的刺激やpH上昇などの化学的刺激により,ガストリンは血中に分泌され,胃体部壁細胞のガストリン/CCK-B受容体に結合し,胃酸分泌を促進する.また腸クロム親和性細胞様(enterochromaffin-like:ECL)細胞の受容体に結合し,ヒスタミン分泌を増加させ,壁細胞のヒスタミンH2受容体を介して,間接的に胃酸分泌を促進する一方,胃体部D細胞からソマトスタチン分泌を促進し,胃酸分泌を抑制する.腸相では,セクレチン分泌を促進し,G細胞からのガストリン分泌を抑制する.ガストリン産生腫瘍や自己免疫性胃炎に伴う高ガストリン血症患者において胃カルチノイド腫瘍が発生することが知られ,動物モデルにおいてガストリンはECL細胞の増殖を促進する.
b.コレシストキニン(cholecystokinin:CCK)
CCKは,上部小腸のI細胞で産生され,十二指腸に流入した脂肪酸,アミノ酸により血中に分泌される.胆囊収縮,Oddi括約筋弛緩により胆汁排出を促進し,ソマトスタチン分泌を介して胃酸分泌を抑制する.ヒトにおいてCCK-A受容体は,胆囊,胃の主細胞やD細胞などに存在するが,膵臓の腺房細胞には存在しないため,膵外分泌促進作用は迷走神経のCCK-A受容体を介すると考えられる.また迷走神経を介して摂食中枢に満腹シグナルを送る.[蔡 明倫・乾 明夫]
■文献
Chen CY, Asakawa A, et al: Ghrelin gene products and the regulation of food intake and gut motility. Pharmacol Rev, 61: 430-481, 2009.
Kamiji MM, Inui A: Neuropeptide y receptor selective ligands in the treatment of obesity. Endocr Rev, 28: 664-684, 2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報