キレート樹脂(読み)キレートジュシ(その他表記)chelate resin

改訂新版 世界大百科事典 「キレート樹脂」の意味・わかりやすい解説

キレート樹脂 (キレートじゅし)
chelate resin

金属イオンとキレート結合を作ることができる官能基を有する樹脂の総称。イオン交換樹脂の一種とも考えられる。キレート結合を作るためには多座配位性基が必要であるので,イミノジカルボン酸基,ポリアミン基などが高分子骨格に導入されて用いられる。これらの配位子と金属キレートの安定度は主として配位子の種類,金属イオンの種類,溶液のpH値に依存するので,それを利用して金属イオンの選択的吸着,分離,濃縮,回収などに使用される。たとえば溶液中の銅Cu,ニッケルNi,亜鉛Zn,コバルトCoなどの重金属イオンを除去したいときは,キレート樹脂をつめたカラムにその溶液を流すことによって目的が達せられる。またキレート安定度がpH値に依存することを利用し,金属イオン間の分離にも用いられる。たとえば水銀イオンHg2⁺と亜鉛イオンZn2⁺とを分離したいときは,キレート樹脂にこれら金属イオンを吸着させたのち,希塩酸で溶出することにより両者を分離できる。キレート樹脂の特殊な応用例として,化学反応の触媒に用いる場合やその半導性を利用する場合もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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