改訂新版 世界大百科事典 「キングチ」の意味・わかりやすい解説
キングチ
Pseudosciaena manchurica
スズキ目ニベ科の海産魚。キグチともいう。全長40cmに達する。体色は橙黄色で唇は赤く,側線より下方の各うろこの下に濃い黄金色の粒状の腺様の器官がある。渤海(ぼつかい)から南シナ海にかけて分布しているが,産卵場,海遊路などの異なるいくつかの群れがあるといわれる。3~7月の産卵期以外は水深40~100mの海底にすんでいる。東シナ海のものは大陸沿岸,朝鮮半島西岸各地で産卵する。産卵期には体色は光沢のある鮮黄色で,口唇・口腔内のアンズ色が濃くなる。また,ふだんはうきぶくろを用いて“グウグウ”と発音をするが,産卵期には濃密な群れをつくり“ガーガー”といっせいに大きな音を出す。また,本種は底生魚であるが産卵期には水面近くを群泳し,水面上にとびあがる習性がある。1尾の抱卵数は3万~10万粒。雌は雄よりやや大きい。また雌は体長約20cm,雄は17cmで成熟しだす。おもに底引網で漁獲され,練製品の材料として用いられる。
執筆者:望月 賢二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報