デジタル大辞泉 「望月」の意味・読み・例文・類語
もち‐づき【▽望月】
[類語]満月・明月・名月・月・月輪・夕月・立ち待ち月・居待ち月・寝待ち月・残月・有明の月・新月・三日月・上弦・下弦・弦月・弓張り月・半月・春月・朧月・寒月
(1)能の曲名。四番目物。現在物。作者不明。シテは小沢刑部友房(こざわのぎようぶともふさ)。信濃の国の住人安田庄司友治(やすだのしようじともはる)が殺害されたため,その妻(ツレ)と子の花若(子方)は流浪の旅に出た。近江の守山で甲屋(かぶとや)という宿屋に泊まったところ,宿の亭主が昔の家来の小沢刑部友房(シテ)であることを知り,再会を喜ぶ。そこへ偶然,主人安田庄司の敵(かたき)である望月秋長(もちづきのあきなが)(ワキ)が宿泊する。小沢はなにくわぬ顔で望月を歓待し,花若の母を盲御前(めくらごぜ)に仕立てて花若とともに座敷に出し,曲舞(くせまい)を歌わせたり,花若に太鼓踊をさせたりした末(〈クセ・羯鼓(かつこ)〉),自分も獅子舞を舞う(〈獅子〉)。そして望月が居眠ったすきを見ておどりかかり,花若と2人で敵討ちをしとげる。敵討ちの手段として芸尽くしを見せる能で,クセ(ツレ),羯鼓(子方),獅子(シテ)と三人三様の芸を演ずるのが趣向である。
執筆者:横道 万里雄(2)歌舞伎舞踊の曲名。長唄を地にしたものが2曲ある。通称《大望月》は1870年(明治3),3世杵屋(きねや)勘五郎が能の《望月》の詞章に曲をつけた。15世市村羽左衛門や7世松本幸四郎が能がかりの演出で踊っている。《花若仇討》ともいう。もう一つは通称《今様望月》で,82年東京新富座初演。西沢一鳳の遺稿に河竹黙阿弥が補筆。3世杵屋正次郎作曲。市川右団次(後の斎入)が純歌舞伎式の演出で踊った。ほかに常磐津の曲もある。
執筆者:権藤 芳一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
長野県中東部、北佐久郡(きたさくぐん)にあった旧町名(望月町(まち))。現在は佐久市の西部を占める。旧望月町は1959年(昭和34)本牧(もとまき)町と布施(ふせ)、春日(かすが)、協和の3村が合併して成立。2005年(平成17)佐久市に合併。蓼科山(たてしなやま)北麓(ろく)にあり、旧町域の大部分は火山灰の粘土層からなる丘陵地。平安時代には官牧の望月牧の一部で、望月牧では旧暦8月15日望月(満月)の夜に朝廷に馬を献納した。近世は中山道(なかせんどう)(国道142号)望月宿で、現在も当時のおもかげを伝え、旅籠(はたご)と問屋を兼ねた真山家住宅(さなやまけじゅうたく)(国の重要文化財)が残っている。明治以降は現JR信越線から外れたため衰退し、現在は付近農村の買い物町。農業が主で、鹿曲(かくま)川沿いの米作のほか、薬用ニンジンを特産する。8月15日の夜に行われる大伴神社(おおともじんじゃ)の榊祭(さかきまつり)は県の代表的祭りの一つ。青年たちが松明(たいまつ)を手に山を駆け下りて、松明を川へ投げ込む。またサカキでつくった神輿(みこし)で暴れまわる。南部の春日温泉には馬事公園があり、蓼科山の山腹は別荘地として開発されている。
[小林寛義]
能の曲目。四番目物。五流現行曲。主君を討たれて離散した家来の1人、小沢刑部友房(ぎょうぶともふさ)(シテ)は、近江(おうみ)国守山の宿屋の主となっている。敵(かたき)の目を逃れてさすらう主君の未亡人(ツレ)と遺児の少年(子方)が宿をとり、主従は思いがけぬ再会の涙を流す。そこに偶然敵の望月秋長(あきなが)(ワキ)が太刀(たち)持ち(アイ狂言)を伴って泊まり合わせる。友房は母子2人を芸能者に仕立てて、酒宴の席に出し、未亡人は土地にはやる盲御前(めくらごぜ)と称して曽我(そが)兄弟の仇討(あだうち)の場面を謡う。興奮した少年が望月に飛びかかろうとするのを制した友房は、少年に羯鼓(かっこ)を打たせ、自分は獅子舞(ししまい)をまう。眠気を催した望月に殺到した2人はついに仇を討ち、本望を遂げる。劇的起伏と緊張感に満ち、中世流行の芸尽くしを見せる能。
明治以降、歌舞伎(かぶき)にも移入され、長唄(ながうた)の作曲に『大望月(花若仇討)』『今様望月』がある。また江戸期の歌舞伎『細川血達磨(ちだるま)』のなかには、常盤津(ときわず)による能がかりの「望月」の場面がある。
[増田正造]
陰暦十五夜の月。満月のことで、狭義には陰暦8月15日の夜の月をさす。「もち」は「持ち」の義でつり合う意といい、陰暦大の月16日、小の月15日の月が太陽と東西に正しく相対するために「もちつき」というとか、この日の月が全円形となって左右対称となるからなどとする説がある。そのほかにも「みてりつき(満月)」の意とする『和字正濫鈔(しょうらんしょう)』などや、「もてりつき(最照月)」とする語源説がある。年中行事の格好の指標とされ、古来、小(こ)正月(1月)、盆(7月)、名月(8月)などの行事が知られる。
満月の欠けたところのないことから、偉大、盛大、豊満などの意をもつ枕詞(まくらことば)「望月の」として用いられ、「たたはし」「足る」などにかかり、また満月が美しく、愛すべきものであるところから、そうした意で「愛(め)づらし」にもかかる。
[宇田敏彦]
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