望月(読み)モチヅキ

デジタル大辞泉 「望月」の意味・読み・例文・類語

もち‐づき【望月】

陰暦十五夜の月。特に、陰暦8月の十五夜の月。満月もちのつき。 秋》
[類語]満月明月名月月輪夕月立ち待ち月居待ち月寝待ち月残月有明の月新月三日月上弦下弦弦月弓張り月半月春月朧月寒月

もちづき【望月】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「望月」姓の人物
望月玉蟾もちづきぎょくせん
望月三英もちづきさんえい
望月信亨もちづきしんこう

もちづき【望月】[謡曲]

謡曲。四番目物。主君安田友治の敵の望月秋長を討とうとした小沢刑部友房が、安田の妻子に芸をさせ、みずからも獅子を舞い、すきを見て望月を殺す。

ぼう‐げつ〔バウ‐〕【望月】

陰暦十五夜の月。満月。もちづき。

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精選版 日本国語大辞典 「望月」の意味・読み・例文・類語

もち‐づき【望月】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 陰暦十五夜の月。満月。もち。
      1. [初出の実例]「ひるのあかさにもすぎて光たり。もち月のあかさを十合せたるばかりにて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 特に、陰暦八月一五日の夜の月。もち。《 季語・秋 》
      1. [初出の実例]「八月十五夜は〈略〉月の光も殊更に明らかなる故に望月(モチヅキ)とも云なり」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)四)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 謡曲。四番目物。各流。作者不詳。信濃国の安田庄司友治が同国の望月秋長に討たれて後、家臣の小沢刑部友房は近江国守山で宿屋の亭主となっている。そこへ友治の妻とその子花若が流浪の末やって来て宿をこい、友房と再会する。たまたま望月も同じ宿に泊まり合わせたので、友治の妻は盲御前に身をやつし、望月の前で謡をうたい、花若は八つ撥を打ち、友房自身も獅子を舞って望月のすきをうかがい、ついに仇を討つ。
    2. [ 二 ] ( 陰暦八月の望月の夜、産馬を天皇に献上したことに由来する ) 長野県東部、佐久市の地名。千曲川支流の鹿曲(かくま)川に沿い、江戸時代は中山道八幡と芦田の間の宿駅として発達。平安以降、牧が置かれていた。

ぼう‐げつバウ‥【望月】

  1. 〘 名詞 〙 陰暦十五夜の月。もちづき。
    1. [初出の実例]「望月年々雖興、今宵適許接群髦」(出典:本朝無題詩(1162‐64頃)三・八月十五夜翫月〈藤原周光〉)
    2. [その他の文献]〔韋応物‐寄李儋元錫詩〕

もちづき【望月】

  1. 姓氏の一つ。

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改訂新版 世界大百科事典 「望月」の意味・わかりやすい解説

望月 (もちづき)

(1)能の曲名。四番目物。現在物。作者不明。シテは小沢刑部友房(こざわのぎようぶともふさ)。信濃の国の住人安田庄司友治(やすだのしようじともはる)が殺害されたため,その妻(ツレ)と子の花若(子方)は流浪の旅に出た。近江の守山で甲屋(かぶとや)という宿屋に泊まったところ,宿の亭主が昔の家来の小沢刑部友房(シテ)であることを知り,再会を喜ぶ。そこへ偶然,主人安田庄司の敵(かたき)である望月秋長(もちづきのあきなが)(ワキ)が宿泊する。小沢はなにくわぬ顔で望月を歓待し,花若の母を盲御前(めくらごぜ)に仕立てて花若とともに座敷に出し,曲舞(くせまい)を歌わせたり,花若に太鼓踊をさせたりした末(〈クセ・羯鼓(かつこ)〉),自分も獅子舞を舞う(〈獅子〉)。そして望月が居眠ったすきを見ておどりかかり,花若と2人で敵討ちをしとげる。敵討ちの手段として芸尽くしを見せる能で,クセ(ツレ),羯鼓(子方),獅子(シテ)と三人三様の芸を演ずるのが趣向である。
執筆者:(2)歌舞伎舞踊の曲名。長唄を地にしたものが2曲ある。通称《大望月》は1870年(明治3),3世杵屋(きねや)勘五郎が能の《望月》の詞章に曲をつけた。15世市村羽左衛門や7世松本幸四郎が能がかりの演出で踊っている。《花若仇討》ともいう。もう一つは通称《今様望月》で,82年東京新富座初演。西沢一鳳の遺稿に河竹黙阿弥が補筆。3世杵屋正次郎作曲。市川右団次(後の斎入)が純歌舞伎式の演出で踊った。ほかに常磐津の曲もある。
執筆者:


望月(旧町) (もちづき)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「望月」の意味・わかりやすい解説

望月(旧町名)
もちづき

長野県中東部、北佐久郡(きたさくぐん)にあった旧町名(望月町(まち))。現在は佐久市の西部を占める。旧望月町は1959年(昭和34)本牧(もとまき)町と布施(ふせ)、春日(かすが)、協和の3村が合併して成立。2005年(平成17)佐久市に合併。蓼科山(たてしなやま)北麓(ろく)にあり、旧町域の大部分は火山灰の粘土層からなる丘陵地。平安時代には官牧の望月牧の一部で、望月牧では旧暦8月15日望月(満月)の夜に朝廷に馬を献納した。近世は中山道(なかせんどう)(国道142号)望月宿で、現在も当時のおもかげを伝え、旅籠(はたご)と問屋を兼ねた真山家住宅(さなやまけじゅうたく)(国の重要文化財)が残っている。明治以降は現JR信越線から外れたため衰退し、現在は付近農村の買い物町。農業が主で、鹿曲(かくま)川沿いの米作のほか、薬用ニンジンを特産する。8月15日の夜に行われる大伴神社(おおともじんじゃ)の榊祭(さかきまつり)は県の代表的祭りの一つ。青年たちが松明(たいまつ)を手に山を駆け下りて、松明を川へ投げ込む。またサカキでつくった神輿(みこし)で暴れまわる。南部の春日温泉には馬事公園があり、蓼科山の山腹は別荘地として開発されている。

[小林寛義]


望月(能)
もちづき

能の曲目。四番目物。五流現行曲。主君を討たれて離散した家来の1人、小沢刑部友房(ぎょうぶともふさ)(シテ)は、近江(おうみ)国守山の宿屋の主となっている。敵(かたき)の目を逃れてさすらう主君の未亡人(ツレ)と遺児の少年(子方)が宿をとり、主従は思いがけぬ再会の涙を流す。そこに偶然敵の望月秋長(あきなが)(ワキ)が太刀(たち)持ち(アイ狂言)を伴って泊まり合わせる。友房は母子2人を芸能者に仕立てて、酒宴の席に出し、未亡人は土地にはやる盲御前(めくらごぜ)と称して曽我(そが)兄弟の仇討(あだうち)の場面を謡う。興奮した少年が望月に飛びかかろうとするのを制した友房は、少年に羯鼓(かっこ)を打たせ、自分は獅子舞(ししまい)をまう。眠気を催した望月に殺到した2人はついに仇を討ち、本望を遂げる。劇的起伏と緊張感に満ち、中世流行の芸尽くしを見せる能。

 明治以降、歌舞伎(かぶき)にも移入され、長唄(ながうた)の作曲に『大望月(花若仇討)』『今様望月』がある。また江戸期の歌舞伎『細川血達磨(ちだるま)』のなかには、常盤津(ときわず)による能がかりの「望月」の場面がある。

増田正造


望月(満月)
もちづき

陰暦十五夜の月。満月のことで、狭義には陰暦8月15日の夜の月をさす。「もち」は「持ち」の義でつり合う意といい、陰暦大の月16日、小の月15日の月が太陽と東西に正しく相対するために「もちつき」というとか、この日の月が全円形となって左右対称となるからなどとする説がある。そのほかにも「みてりつき(満月)」の意とする『和字正濫鈔(しょうらんしょう)』などや、「もてりつき(最照月)」とする語源説がある。年中行事の格好の指標とされ、古来、小(こ)正月(1月)、盆(7月)、名月(8月)などの行事が知られる。

 満月の欠けたところのないことから、偉大、盛大、豊満などの意をもつ枕詞(まくらことば)「望月の」として用いられ、「たたはし」「足る」などにかかり、また満月が美しく、愛すべきものであるところから、そうした意で「愛(め)づらし」にもかかる。

[宇田敏彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「望月」の意味・わかりやすい解説

望月
もちづき

長野県東部,佐久市西部の旧町域。蓼科山の北斜面にある。 1959年本牧 (もとまき) 町と春日村,布施村,協和村が合体して望月町が成立。 2005年佐久市,臼田町,浅科村と合体して佐久市となった。火山灰台地に立地し,平安時代は官牧の望月の牧があった。中心集落の望月は近世中山道の宿場町。真山 (さなやま) 家住宅 (国指定重要文化財) に当時の問屋と旅籠を兼ねた典型的な宿場建築を残す。薬用ニンジンを特産。別荘団地が開発されている。春日温泉や御泉水自然園があり,一部は八ヶ岳中信高原国定公園に属する。

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百科事典マイペディア 「望月」の意味・わかりやすい解説

望月[町]【もちづき】

長野県東部,北佐久郡の旧町。小諸市の南西にある農山村地域で,中山道の宿場町であった望月が中心。稲作,畑作,林業を行う。薬用ニンジン,酒も産する。2005年4月南佐久郡臼田町,北佐久郡浅科村と佐久市へ編入。128.64km2。1万619人(2003)。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「望月」の解説

望月
〔長唄〕
もちずき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
河竹黙阿弥
演者
杵屋勘五郎(3代)
初演
明治15.6(東京・新富座)

望月
(通称)
もちずき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
高木織右衛門武実録
初演
嘉永1.8(江戸・中村座)

望月
もちずき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
元文5.12(大坂・中村十蔵座)

望月
〔常磐津〕
もちずき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治5.5(東京・中村座)

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普及版 字通 「望月」の読み・字形・画数・意味

【望月】ぼうげつ

月をみる。

字通「望」の項目を見る

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事典・日本の観光資源 「望月」の解説

望月

(長野県佐久市)
中山道六十九次」指定の観光名所。

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