日本大百科全書(ニッポニカ) 「クタドクビリク」の意味・わかりやすい解説
クタドクビリク
くたどくびりく
Kutadgu-bilig
中央アジアのトルコ人のイスラム道徳書。「幸福の書」を意味する。ヒジュラ暦462年(西暦1069/70)に、バラサグン生まれのトルコ人、ユースフYūsuf Khā Hājibが執筆し、カシュガルのカラ・ハン朝君主に献上したもの。トルコ語、トルコ文学上の記念碑的作品でもある。韻文によって述べられているが、全体として一つの物語の体裁をとっており、登場人物のそれぞれを通じて、正義観、道徳観あるいは理想的な君主や宰相、民衆像が表現されており、当時のトルコ人の世界観、人生観、哲学、思想から生活、風俗を知ることができる。
現在最古のトルコ文学作品であり、カシュガリーの『トルコ・アラビア語辞典』とともに、イスラム化してまもないトルコ人の文化を伝える。
[永田雄三]