カシュガル(読み)かしゅがる(英語表記)Kashghar

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カシュガル」の意味・わかりやすい解説

カシュガル
かしゅがる / 喀什噶爾
Kashghar

中国、新疆(しんきょう)ウイグル自治区西端にある一大オアシス、およびその中心となる県級市をさす。県級市は行政上では喀什(カーシー)市と記され、カシュガル地区の公署所在地である。常住人口41万0381(2012)。南疆線(トゥルファン―カシュガル)が通じ、市中心部から北約9キロメートルにはカシュガル空港がある。

 タクラマカン(タクリマカン)砂漠が広がるタリム盆地の四周には、天山(てんざん)、パミール崑崙(こんろん)山系からの融雪河川による灌漑(かんがい)農耕に支えられたいくつものオアシス都市が古くから発達し、シルク・ロードを支えていた。なかでもカシュガルは、天山を越え西トルキスタン、カザフ草原へ通じる東西通商路上の要衝として古くから繁栄し、現在でも南新疆最大の農産物集積地であるなど、カシュガリア地方における政治的・経済的中心地となってきた。タリム盆地四周のオアシス地帯一帯がカシュガリアと称されてきたのはこのためである。

真田 安・編集部 2018年1月19日]

歴史

漢代には疎勒疏勒)(そろく)国として知られ、イラン系の民族が住んでいたが、9世紀以降トルコ系の民族が移り住み、10世紀にはイスラム教が浸透し始め、15世紀以降トルコ・イスラム社会が成立した。カシュガリアは絶えず中国、北アジア、西アジアの民族に支配されてきたが、17~18世紀にはカシュガル・ハン国のイスラム宗教貴族ホージャ家がオアシス経済を基盤に、カシュガルを首都にしてカシュガリアを支配した。その後、清(しん)の征服により中国領の最西端に組み込まれて現在に至っている。住民の大多数はイスラム教徒のトルコ系ウイグルであり、現在でも伝統的なイスラム文化が生き続けている。

[真田 安 2018年1月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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