日本大百科全書(ニッポニカ) 「グエン・ズウ」の意味・わかりやすい解説
グエン・ズウ
ぐえんずう / 阮攸
(1765―1820)
ベトナムの詩人。父、叔父、兄弟とともに黎(れい)朝に仕えるが、黎朝滅亡後、たびたび黎朝再興を企て失敗。のちに請われて、西山朝を滅ぼした阮(げん)朝に心ならずも仕える。知県、知府と昇進し、東閣学士となり広平省正となる。広平省正時代「政事簡易、士民相愛」を説いて、省内の士民から敬愛され大いにその名を馳(は)せた。のち、選ばれて清(しん)国に正使として派遣され、その間、中国人民の貧困階級に接して感銘し『金雲翹(キム・バン・キェウ)新伝』を著す。帰国後、礼部右参知に昇進し、ふたたび清国派遣を命ぜられるが、病を得て果たせず死去。代表作は、ベトナム文学の最高傑作と評価される『金雲翹新伝』のほか、多数の漢詩や字喃(チュノム)で書かれた『衆生(しゅじょう)十類祭文』『帽坊青年托辞』『活祭布坊少女文』『樵夫伸冤歌(しょうふしんえんか)』など。
[竹内与之助]