改訂新版 世界大百科事典 「グリゴレスク」の意味・わかりやすい解説
グリゴレスク
Nicolae Grigorescu
生没年:1838-1907
ルーマニアの画家。若くしてイコン画家として名をなした後,1861年奨学金を得てパリに赴き,ロマン主義絵画を学んだのちバルビゾンに居を構え,農民の生活や風景を筆致を残して描き,68年よりサロン(官展)に出品。故国では新しい技法の旗手として賛否両論をもって迎えられる。76年より再びフランスに滞在,印象派の画家たちと交わる。77年露土戦争の従軍画家として多くのスケッチを残す。本来大画面には向かず,優れたデッサン力をみせる速描きの即興的な市井の人々の肖像画や風俗画に名品を数多く残した。86年のパリでの個展の成功を経て,名実ともにルーマニア近代絵画の指導者となるが,晩年は眼病のため,また顧客のためのマンネリ化もみられる。
執筆者:鐸木 道剛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報