ケイ淘汰(読み)けいとうた(その他表記)K-selection

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケイ淘汰」の意味・わかりやすい解説

ケイ淘汰
けいとうた
K-selection

生物進化において個体の生存能力を高める方向への自然淘汰をさす。マッカーサーR. H. MacArthurとウィルソンE. O. Wilsonによって1967年に名づけられたことばで、アール淘汰(r淘汰)の対語。安定した環境にすむ生物個体群は、突発的な厄災による死亡が少ないために環境収容力に近い高密度を維持する傾向にある。そこでは、それ以上繁殖能力を増大させるよりも、込み合った状態のもとでの種内あるいは種間競争を生き抜くために、個体の生存能力を高める方向への淘汰がおこると考えられ、これをケイ淘汰とよぶ。ピアンカE. R. Piankaによれば(1970)、この淘汰を経てきた種(K戦略種)は、発育初期の低死亡率、ゆっくりとした発育、遅い繁殖年齢、大きな体、長い寿命、一生に何回も繁殖するなどの形質を獲得する。一般には大形の子(こ)(卵・種子)を少産する種がこれにあたる。一方、アール淘汰を経てきた種(r戦略種)は逆の形質を獲得し、一般には小形の子(卵・種子)を多産する種がこれにあたる。

[渡辺 直]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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