淘汰(読み)トウタ(その他表記)selection

翻訳|selection

デジタル大辞泉 「淘汰」の意味・読み・例文・類語

とう‐た〔タウ‐〕【×淘汰】

[名](スル)
水で洗ってより分けること。転じて、不必要なもの、不適当なものを除き去ること。「不良企業淘汰される」
環境に適応した生物子孫を残し、他は滅びる現象選択
流水や風による運搬過程で、堆積物たいせきぶつが粒径・形状・比重などに応じて選別される現象。

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精選版 日本国語大辞典 「淘汰」の意味・読み・例文・類語

とう‐たタウ‥【淘汰・洮汰】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「淘」も「洮」も水で洗う意 ) 洗ってより分けること。転じて、悪いものを除き良いものを選び残すこと。
    1. [初出の実例]「淘汰の教とも衆生をゆりそろゆる心ぞ」(出典:寛永刊本蒙求抄(1529頃)四)
    2. 「多数の噂に上った局員課員の淘汰(タウタ)も」(出典:門(1910)〈夏目漱石〉二三)
    3. [その他の文献]〔後漢書‐陳元伝〕
  3. ( 淘汰 ) 生物集団で、特定形質をもつ個体群だけが特に繁殖するようになることで、適者が選ばれ不適者は除かれる現象。ダーウィンはこれを人為淘汰自然淘汰雌雄淘汰に分けた。
    1. [初出の実例]「是等外部の物は、自然の淘汰を以て自然の進化を経べきなり」(出典:内部生命論(1893)〈北村透谷〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「淘汰」の意味・わかりやすい解説

淘汰 (とうた)
selection

生物学用語。選択,選抜ともいわれる。ある生物種の地域集団内には表現型において異なる個体がさまざまにあるのが普通であるが,そのような表現型の違いが,個体間に適応度,すなわち生存率および(または)繁殖率の差を生じさせることがある。この過程を淘汰という。この場合,表現型上の違いに遺伝的な根拠があると,その集団の遺伝子型組成は世代ごとに変化していくことになる。この生存率と繁殖率の違いが人間の意図的な操作によって生じた場合を人為淘汰と呼び,そうでない場合すべてを自然淘汰と呼んで区別する。

 淘汰には原理的には二つの過程が想定される。一つは正の淘汰と呼ばれるもので,集団中の適応度の高い個体が増えていく過程で,人為淘汰がその典型例である(この場合にはむしろ選択という訳語のほうがふさわしい)。もう一つは負の淘汰と呼ばれるもので,集団中の適応度の低い個体が除去される過程で,安定性淘汰のような自然淘汰がその例である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「淘汰」の意味・わかりやすい解説

淘汰
とうた
selection

生物学用語。ある生物集団において,不適当な個体が排除され,特定の形質をもつ生存力の大きい適者が生残って繁殖する現象,またはそのような操作をさす。選択ともいう。人為淘汰と自然淘汰に分けられる。人為淘汰は,育種において,種々の系統の混った集団のなかから優良な個体を選抜し,新しい品種を育成する手段として用いられてきた。自然淘汰は C.ダーウィンが進化の要因として重要視したことから,生物界の重要な問題として取上げられるようになった。ダーウィンは自然淘汰によって,その環境に少しでもより適応したものが生残り,微小変異が積重なって新しい形質が生じ,さらにこれらが集積すると新しい種が生じると考えた。雄と雌とが形態や色彩が著しく異なるのも,このような分化が行われたものと考え,これを性淘汰と呼んでいる。ネオダーウィニズムの典型的な主張においては,種や品種の変化は,必ず,いかに小さいにせよ淘汰での有利・不利の差により導かれると考えられ,それに対する難点も指摘されてきたが,自然淘汰が進化の主要な要因の一つであるとするのが実験進化学の基本的な立場である。現在では少くとも蛋白質分子のレベルでは,淘汰について中立 (有利でも不利でもない) の形質の蓄積も問題となっている。

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百科事典マイペディア 「淘汰」の意味・わかりやすい解説

淘汰(生物)【とうた】

選択とも。生物個体群の中で特定の形質(厳密には遺伝子)をもつ個体が子孫を残すことに関して選別されること。その形質をもつために,他の個体よりも子孫を残しにくくなる場合も,残しやすくなる場合も,ともにいう。 自然界で起こる淘汰は自然淘汰と呼ばれ,進化の基本的な要因となっている。人間が家畜や作物で特定の形質をもつものを選抜することを人為淘汰と呼び,古くから品種改良の手段として用いられてきた。→自然淘汰説
→関連項目利己的遺伝子

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普及版 字通 「淘汰」の読み・字形・画数・意味

【淘汰】とう(たう)た

水で洗いよりわける。明・方孝孺〔白鹿洞規賛〕群經を刮し、衆を淘汰し、其の大中を執り、去取予奪し、書孔(はなは)だ多し。

字通「淘」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「淘汰」の意味・わかりやすい解説

淘汰
とうた

選択

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世界大百科事典(旧版)内の淘汰の言及

【分級作用】より

…構成粒子の大きさ(粒径)がふぞろいの固体粒子が水または空気中を沈降するとき,その粒径の違いによって沈降速度が異なるため,二つ以上の粒子群に分離されること。淘汰ともいう。一般に流体中の固体粒子の沈降速度は流体の粘性,比重ならびに粒子の大きさ,形状,比重によって規制される。…

【スクオッター】より

…36年に19郡以外の土地の占拠が年10ポンドの名義料で合法化され,47年に14年間の賃借りと土地購入権が認められると,スクオッターは粗末だった住居を豪邸に建てかえ,永住の決意を示した。 歴代の植民地政府は小農層育成に力をいれ,種々の土地政策(1850‐60年代にセレクションselectionと呼ばれる小区画農地を1エーカーわずか1ポンドで払い下げるなど)でスクオッターの勢力削減を図ろうとした。しかしスクオッターはダミーを使って水源のあるセレクションを押さえるなどして対抗し,セレクターselectorと呼ばれた小農層と激しく対立した。…

※「淘汰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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