日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケメンチェ」の意味・わかりやすい解説
ケメンチェ
けめんちぇ
Kemençe トルコ語
トルコのリュート型弦鳴楽器。語源はペルシア語のケマン(弓)にあり、馬の尾毛製の弓で擦奏する楽器をさす。同種の楽器は西アジアから北アフリカにかけて広く分布するが、とくにトルコのケメンチェとイランのカマーンチェが代表的である。
トルコのケメンチェは全長約50センチメートル、琵琶(びわ)に似た木製の胴に松などの表板をつけた短棹(さお)の楽器で、3弦をもつ。イランのカマーンチェは全長約60センチメートル、皮を張った椀(わん)型の胴を長い棒状の棹が貫通する形で、脚棒をもつ。4弦が多く、胡弓(こきゅう)のように楽器のほうを回して弾き分ける。両者ともフレットはない。
トルコ、イランとも主として芸術音楽に用いられるが、演奏がむずかしく、近年ではバイオリンにかわられつつある。
[藤田隆則]