コスト=プッシュ・インフレーション(その他表記)cost-push inflation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

コスト=プッシュ・インフレーション
cost-push inflation

生産コストの上昇によってもたらされる物価騰貴需要インフレーションコスト・インフレーション区別を論理的に一貫して説明したものは少いといわれる。抽象的には,M.ブロンフェンブレンナーと F. D.ホルツマンの有効需要に基づくものか否かによる区別があるが,現実的には F.マハループの説が有名である。マハループは,まず需要インフレーションをコスト上昇と無関係の自発的需要インフレーション,コスト上昇の結果として生じる支出増加による誘発的需要インフレーション,完全雇用政策に伴う拡張的財政金融政策によって発生する支持的需要インフレーションの3つのタイプに区別する。そして第3番目の支持的需要インフレーション下で,賃金,原材料価格などが攻撃的に引上げられ,それが生産物価格に転嫁されて一般物価水準が押上げられる場合をコスト=プッシュ・インフレーションと呼んだ。供給側にインフレの原因を求めたものであるため,売手インフレーションとも呼ばれる。

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改訂新版 世界大百科事典 の解説

コストプッシュ・インフレーション
costpush inflation

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世界大百科事典(旧版)内のコスト=プッシュ・インフレーションの言及

【インフレーション】より

…インフレを一般的な財の価格の上昇と考えると,それが総需要曲線が右にシフトしたから起こったのか,または総供給曲線が上方にシフトしたから起こったのか,という2種類に分類できる(図参照)。前者はふつうディマンドプル・インフレーションdemand‐pull inflation,後者はコストプッシュ・インフレーションcost‐push inflationと呼ばれる。たとえば完全雇用の状態にある経済において,政府が赤字財政により政府支出を増加させると総需要曲線が右にシフトして,インフレ・ギャップが発生し,物価が上昇するのが前者である。…

【クリーピング・インフレーション】より

…景気は沈滞し,失業率も上昇しつつあるような時期に,物価がなお年率で2~3%程度のゆるやかな上昇を続ける状況をさす。creepingは〈忍びよる〉の意味であり,不況下の物価上昇(スタグフレーション)が注目された1957,58年ころのアメリカで定着した用語である。すなわち,初期のケインズ経済学においては,インフレ・ギャップの考え方にうかがえるように,インフレはもっぱら超過需要(総需要が完全雇用産出高を超えること)によって起こるものとされた。…

※「コスト=プッシュ・インフレーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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