改訂新版 世界大百科事典 「コラートピテクス」の意味・わかりやすい解説
コラートピテクス
Khoratpithecus
2004年にY.チャイマニらによって記載されたタイの大型化石類人猿。2種が知られている。タイ北部コラートで発見された900万~700万年前の種コラートピテクス・ピリヤイK.piriyaiについては,下顎骨に顎二腹筋前腹の付着痕が見られないという特徴から,現生霊長類の中で唯一この筋を欠くオランウータンの祖先種であるという主張がされている。タイ北部のチェン・ムアン盆地から発見されている1350万~1000万年前のコラートピテクス・チェンムアネンシスK.chiangmuanensisは当初,ルーフォンピテクスLufengpithecusではないかとされたが,臼歯の形態がコラートピテクス・ピリヤイに類似することから,コラートピテクス属に移された。もし,コラートピテクスがオランウータンの祖先種であれば,シバピテクス・オランウータン系統仮説は否定されるが,顎二腹筋前腹の付着痕の強弱には個体差があることから,議論が続いている。
執筆者:中務 真人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報