犬歯より後ろに生える歯をいう。ヒトの乳歯には左右上下のあごに各2本合計8本,永久歯には各5本合計20本ある。各5本の永久臼歯は,乳臼歯deciduous molarisの代生歯であり,臼前歯とも呼ばれる小臼歯bicuspids各2本と,発生学的には乳歯と考えられる大臼歯molaris3本からなる。大臼歯の代生歯はすでに退化してしまっている。智歯あるいは親知らずとも呼ばれる第3大臼歯も退化の経過をたどっている。臼歯の機能は,食物をかみ砕き,すりつぶすことにある。したがって臼歯の形は食性によって動物間で違いがみられる。肉食動物の臼歯は,咬頭が高く,肉を引き裂くのに都合よくとがっている。これを裂肉歯と呼ぶ。草食動物では,食物をすりつぶしやすいように,ひきうすのような形をしている。その咬耗(かんで,すりへること)された咬合面にできる模様の形から皺襞(しゆうへき)歯と月状歯に分けられる。雑食動物の臼歯の咬頭は丘状をしているので丘状歯と呼ばれる。
→歯
執筆者:小野 博志
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哺乳(ほにゅう)類の上下両顎(がく)の左右最後部に位置する歯をいう。前方の小さいものを小臼歯(前臼歯)、後方の大きいものを大臼歯(後臼歯または単に臼歯)とよび、それらの形と数は動物の種類によって異なる。大臼歯は換歯せず、乳歯は存在しない。草食獣の臼歯の咬合(こうごう)面には小さな起伏があるが全体としては平らであり、食物の磨砕に適している。このように形・機能が挽臼(ひきうす)に似ていることからこの名がつけられている。肉食獣にも臼歯はあるが、形・機能は草食獣のものと異なり、咬合面はとがっていて、すりつぶすよりは、かみ切るのに適している。とくに臼歯列のほぼ中央にある1本の大きな歯(裂歯または裂肉歯)がそのおもな機能を果たし、前後の臼歯はかなり小さくなっている。ヒトを含む雑食性動物の臼歯の形および機能は、草食獣のものと肉食獣のものとの中間型である。その咬合面は肉食獣のものほどはとがらず、また草食獣のそれほどには臼状でない。
[内堀雅行]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
… 第4は,同じく爬虫類までの特色である同形歯性が変わったことである。古生代の哺乳類様爬虫類にきざしていたことであるが,各歯ごとに形状が分化し,前方から切歯(門歯)incisor,犬歯canine,小臼歯(しようきゆうし)(前臼歯)premolar,大臼歯molarという4種の群(これを歯種という)が区別される。このことを〈異形歯性〉と呼ぶ。…
※「臼歯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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