改訂新版 世界大百科事典 「コロノスのオイディプス」の意味・わかりやすい解説
コロノスのオイディプス
Oidipous epi Kolōnōi
ギリシア三大悲劇詩人の一人ソフォクレスの最晩年の名作。父を殺し母と結婚するという,運命の予告どおりの罪と汚れを犯したオイディプスは,われとわが手で己を罰し盲目となったのち,娘アンティゴネとともに諸国を漂浪し,ついにアテナイのエウメニデスの聖域にたどりつく。ソフォクレスの作品はその所から幕が上がり,老いさらばえたオイディプスがなおも身に襲いかかる苦難に耐えながら,運命の時が来たことを悟り,神の声に導かれながら地上から忽然と姿を消す最期のさまを描き出す。ソフォクレスの諸作中,宗教的感動をもっとも深くするものと評されている。舞台上演は前401年春,作者没後5年経てのち孫の手によってなされたと伝えられる。
執筆者:久保 正彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報