日本大百科全書(ニッポニカ) 「コンプリメンタリ回路」の意味・わかりやすい解説
コンプリメンタリ回路
こんぷりめんたりかいろ
complementary circuit
トランジスタでは電圧・電流特性が等しく、その極性が逆のものが同一基板上に容易に得られる。この性質を利用した回路で、相補回路ともいい、プッシュプル増幅器やインバーター回路などに用いられる。
プッシュプル増幅器としては、バイポーラ型のpnpやnpnトランジスタ、あるいはpMOS(金属半導体シリコン)やnMOSトランジスタなどで、極性は違うが、電圧・電流特性のまったく等しいものを用いると、各トランジスタの電圧の加え方と電流の流れ方が逆になる。したがって、たんに並列に接続しただけで、入力信号の正負の半サイクルごとに別々のトランジスタが働き、真空管のときのような位相反転回路を必要としない。また、トランジスタの低出力インピーダンスを利用し、トランス(出力変成器用)を用いずスピーカーに接続できて高忠実度再生増幅回路(OTL回路)が得られる。この場合、特性がまったく等しく極性も等しいトランジスタが必要となるので、これに対応するダーリントン接続(トランジスタ2個を組み合わせて、1個の等価なトランジスタとする)を用いた準コンプリメンタリ回路を用いることもある。
インバーター回路には、コンプリメンタリMOSの意味のCMOS回路が用いられる。これは同一基板上にpMOSとnMOSの電界効果型トランジスタを構成したもので、入力に高・低レベルの信号を入れた場合、いずれかのトランジスタは電流遮断状態になる。静止状態では漏れ電流しか流れず、消費電力は非常に少なく、出力電圧振幅も電源電圧に近いので、低電圧動作が可能となる。このため、電池を電源とする電卓やデジタル時計などに用いられている。
[岩田倫典]