日本大百科全書(ニッポニカ) 「サハ語」の意味・わかりやすい解説
サハ語
さはご
Саха/Saha
トルコ系諸言語の一つ。ロシア連邦、シベリアのサハ共和国、クラスノヤルスク地方の北部などで約38万人(1989)が使用している。自称はサハ語であるが、ヤクート語Yakutともよばれてきた。北極海に臨むタイミル自治区のドルガン人の言語は、サハ語の方言である。トルコ語族のうち東方語派に属しているが、他のトルコ諸語とは長く孤立して、モンゴル語やツングース諸語と接触して、その影響を受けている。音韻の特徴として、長母音、二重母音を有し、それらが南方語派のトルクメン語の長母音と対応するなど、トルコ祖語の古い姿を保っているとみられる面があるが、円唇母音の同化現象などは後の発達であろう。語彙(ごい)には、多くのモンゴル借用語がみられ、動物名や自然現象名のエベンキ借用語も入っている。サハ(ヤクート)文語は自治共和国成立(1922)後につくられたが、ラテン化(1929)を経て、1939年からキリル文字による正書法が採用されている。
[竹内和夫]