ザジャル(その他表記)zajal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ザジャル」の意味・わかりやすい解説

ザジャル
zajal

中世のスペイン,特にその南部に起った民謡の一種。アラブ人の征服以来,スペインにはアラビア語が普及したが,土着人の言葉と交って特殊のアラビア語方言も行われた。ザジャルはそのような言葉によった恋愛歌を中心としたもので,特に 11世紀末 (1086頃) からアンダルシア地方を支配したムラービト朝のもとで流行した。その代表的詩人はセビリア,バダホスその他で吟遊生活をおくったコルドバ生れのイブン・クズマーン (1160没) で,その作は地方と都市,階級の上下を問わず広く人々に愛唱された。この詩体は,北アフリカから,遠くバグダードその他の東方イスラム諸国にも広まった。現在でもモロッコの諸都市などにザジャルの愛好者が多いという。すべて歌謡のためのものだが,笛,太鼓カスタネットなどを伴奏楽器とした。中世の南フランスに輩出したトルバドゥールという吟遊詩人たちは,スペインのザジャルやムワッシャハなどの影響によって出現したという説が多くの学者によって主張されている。しかし証明の決め手が不十分として反対説の立場をとっている者も少くない。

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世界大百科事典(旧版)内のザジャルの言及

【アラブ文学】より

…イブン・ハーニーIbn Hānī(934ころ‐1071)はブフトリーを,イブン・ダッラージュIbn Darrāj(958‐1030)はムタナッビーをそれぞれ手本にした。その中にあってイブン・クズマーンIbn Quzmān(?‐1160)が完成したムワッシャハmuwashshaḥaと呼ばれる副韻と脚韻を連節形式にまとめた詩形式や,口語をとり入れたザジャルzajal詩は,プロバンス語を通じヨーロッパ文学に影響を与えた点で注目に値する。散文の方では神学者兼政治家イブン・ハズムが恋愛論に関する《鳩の頸飾り》という傑作を残している。…

※「ザジャル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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