ムワッシャハ(英語表記)muwashshaḥ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムワッシャハ」の意味・わかりやすい解説

ムワッシャハ
muwashshaḥ

11世紀頃からスペインの南部で起ったアラビア語の詩の一ジャンル。本来が歌謡のための恋歌で,それまでの伝統的アラビア語詩とは構成を異にしている。これはアンダルシア地方に昔から行われていたロマンス語の歌謡の影響を受けたためであろうという説が有力である。ムワッシャハとは「ウィシャーハ wishāḥ (女性が一方の肩から斜めに胸に掛け,他の側の腰まで垂下げる飾り帯のことで,真珠ルビーなどをちりばめてあった) をまとった者」という意味であるという。この詩形は,カシーダのように前後2句を1バイトとして終りまでバイトを重ねていくのではなく,バイトの部分と,単句だけの部分とを交互に重ね,押韻 (ライム) なども数種を混用する。 11世紀の小王朝併立時代 (レイエス・デ・タイファス) にアルメリアのウバーダト・アル・カッザーズが現れてムワッシャハ体の一代の巨匠とうたわれ,12世紀には各地に名詩人が出た。やがて,この詩体は北アフリカを経て東方イスラム世界にも広まった。

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