トルバドゥール(英語表記)troubadours

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トルバドゥール」の意味・わかりやすい解説

トルバドゥール
troubadours

南フランスの吟遊詩人総称。 11世紀末から 13世紀末にかけて,オック語による抒情詩を残した。吟遊詩人は,元来ローマ時代の軽業,ものまねなどの芸人の系統をひく職業人 (ジョングルール ) であるが,隆盛時には国王諸侯から一般大衆に及び,庇護者を求めて城を訪れ,競詩会に参加した。理想と現実,希望と絶望,優雅と礼節などを調和させた恋愛表現を即興でつくり,楽器の伴奏で歌う場合が多い。 1090年頃に突然流行しはじめ,アキテーヌ公ギヨーム9世,ジョフレ・リュデルセルカモン,マルカブランらの詩人が,宮廷風恋愛の理論を発展させた。最盛期 (1170~1210) にはベルナール・ド・バンタドゥール,ベルトラン・ド・ボルン,フォルケ・ド・マルセイユらが出て,風刺または難解な詩へ向う傾向をみせる。その後はキリスト教異端のアルビ派に対する十字軍遠征 (1209~29) による南フランス文化の破壊など,恋愛とともに戦争への呪いと犠牲の賛美が題材となる。 1270年以後衰退。その影響はヨーロッパ全土に及び,特にイタリアに顕著。

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