日本大百科全書(ニッポニカ) 「シグルズソン」の意味・わかりやすい解説
シグルズソン
しぐるずそん
Jón Sigurðsson
(1811―1879)
アイスランドの政治家、文献学者、歴史家。デンマーク王国の支配に反対し、アイスランド自治運動の指導者として祖国固有の議会アルシングAlthingの再設立を実現(1843)し、議長となる(1845)。国王代理に提示された彼の自主憲法制定案は拒絶されたが、完全な自由貿易権の獲得に尽力した。アイスランド移住1000年を記念して国民の間に高まったアルシングの権限拡大要求に支えられ、妥協的ではあったが独自の草案による憲法発布を実現した(1874)。自由主義的雑誌『新協会誌』Ný Fjelagsritを主宰(1841~1873)。デンマーク王立北欧古文書館員(1847~1865)、古アイスランド語文献研究の第一人者として「サガ」や史料集を多数編纂(へんさん)し、アイスランド史の論文も発表した。資産はすべて祖国に遺贈し、彼の名を記念する財団も創設された。アイスランドが共和国としてデンマークから独立した6月17日(1944)は、彼の誕生日にちなむ。
[荒川明久]
『百瀬宏著『世界現代史28 北欧現代史』(1980・山川出版社)』