シリコタングステン酸(読み)シリコタングステンサンエン

化学辞典 第2版 「シリコタングステン酸」の解説

シリコタングステン酸(塩)
シリコタングステンサンエン
silicotungstic acid(silicotungstate)

Siをヘテロ原子とするタングステンのヘテロポリ酸の慣用名.タングストケイ酸(学術用語方式),ケイタングステン酸(通称)ともいう.代表的なものはシリコ十二タングステン酸とその塩である.【】シリコ十二タングステン酸(IUPAC半体系的慣用名)(silicododecatungstic acid):H4[SiW12O40]・nH2O(n = 5,7,14,24,29,30,31など,七水和物がもっとも安定である)およびその塩.酸,塩ともにケギン構造のヘテロポリ酸陰イオン [SiW12O40]4- からなる.水溶液中でNa2WO4,Na2SiO3,HClを,量比,酸性度,温度を調整して反応させると,α,β,γ型ケギン構造の酸,塩が得られる.α型は,比較的高温,弱酸性,β型は比較的低温,強酸性で反応させる.γ型は,K8[SiW10O36],Na2WO4,HClから製造する.遊離酸は水に易溶で,かなり強い酸である.塩:遊離酸から各金属塩も得られる.α型のBa2[SiW12O40]・16H2Oは,無色の単斜晶系結晶,K4[SiW12O40]・15H2Oも無色の単斜晶系結晶.β型のK4[SiW12O40]・9H2Oは,淡黄色の斜方晶系結晶.アルカリ金属との塩も水に可溶,有機塩基などの塩は不溶.アルカリ水溶液のなかでは徐々に分解する.α型の酸は,アルカロイドの沈殿用,検出用試薬,塩基性アニリン染料の媒染剤,鉱物分離用重液の製造,酢酸合成用触媒などに用いられる.[CAS 12027-38-2]【】シリコ九タングステン酸塩(silicononatungstate):M10[SiW9O34]・nH2O.Na9[SiHW9O34]・23H2Oは,三斜晶系.【】シリコ十タングステン酸塩(silicodecatungstate):M8[SiW10O36]・nH2O.β型ケギン構造のK4[SiW12O40]をK2CO3水溶液(pH 9.1)中で分解するとK塩が得られる.水に可溶.【】シリコ十一タングステン酸塩(silicoundecatungstate):M8[SiW11O39]・nH2O[CAS 12412-85-0].K8[SiW11O39]・13H2Oは,立方晶系.アルカリ金属塩は一般に無色で,水に可溶.水溶液中で安定である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android