改訂新版 世界大百科事典 「スライマーン山脈」の意味・わかりやすい解説
スライマーン[山脈]
Sulaimān Range
パキスタン中西部,バルーチスターン州北東部の州境沿いに走る雁行性諸山脈の総称。スレーマーン山脈とも呼ばれる。同州と北西辺境州との境界部から南西に弧状に走り,アフガニスタン国境のトーバ・カーカル山脈との間に袋状の山地地帯を形成する。最高峰は北東端のタフティ・スライマーン(〈ソロモンの王座〉の意)で,3374m。平均高度約2000mで南に行くにつれ高度を下げるが,南のインダス平原には急崖をもって落ち込む。イラン高原の北東縁にあたり,インド世界と西アジア世界とを分ける自然的障壁をなしてきた。南西端はブグティ,マリー丘陵となり,その麓には天然ガスの埋蔵が多い。アルプス・ヒマラヤ地帯に属し,白亜紀~第三紀始新世の石灰岩・砂岩を主体とする。乾燥地帯に属するため植生は野生オリーブなどの小灌木に限られ,バルーチ族やパシュトゥーン遊牧民の夏の放牧地となる。山脈南部のフォート・マンローは避暑地である。
執筆者:応地 利明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報