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植生 しょくせいvegetation

翻訳|vegetation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

植生
しょくせい
vegetation

ある対象地域に生育している植物の集団の状態をいう。その地域の気候や地形・土壌,さらには人間を含む動物などとの関係によってその地域独特の植生が形成される。植生の分類には,相観的まとまりをもとにしたもの (森林植生,海岸植生など) と,生態学的基準によって類型化された植物集団 (植物群落) によって表現するもの (スズタケ-ブナ群落など) がある。また原生林などのように,人間の影響を受けない「自然植生」と,人為的作用が加わってできた「代償 (または人為) 植生」とに大別される。厳密な意味での自然植生は,高山や極地のごく一部に限られ,ほとんど存在しない。また代償植生としては,スギ,ヒノキなどの植林による人工林自然林の伐採後に生じたアカマツ林などの集落がこれにあたる。

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デジタル大辞泉の解説

しょく‐せい【植生】

ある場所に生育している植物の集団。植物群落。

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百科事典マイペディアの解説

植生【しょくせい】

陸上に生育している植物の集団をいう。その地域の代表植物によって分類するが,組成,大きさは厳密には決められていない。同一の種からなる植生を純植生,異種が混合するものを異種植生という。

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世界大百科事典 第2版の解説

しょくせい【植生 vegetation】

陸上に生育している植物の集団を漠然とさす語であるが,大地を被覆する植物の集まりというような意味あいで用いられる。なんらかの生態学的基準によって類型化された植生は植物群落と呼ばれる。
[植生の機能]
 植生は生態系における一次生産者として,地球上の生命に欠くことのできないエネルギーや物質を生みだしているが,それと同時に植生の存在は地球上の気候環境にも大きく影響している。およそ45億年といわれる地球の歴史の半ばの20億年ころに,植物の働きで大気中に増加したと考えられている酸素は,現在では大気の容量で20.95%を占め,全生物が1年間に大気と交換する量の1万倍程度存在しており,植生の影響による増減はあまり問題にならない。

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大辞林 第三版の解説

しょくせい【植生】

ある場所に生育している植物の集団。荒原・草原・森林などはその例。植被。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

植生
しょくせい

植物生態学用語。ある場所に生育している植物の集団をまとめて表現する場合に用いられ、植被(植生被覆)、植衣、植群などともいう。植生はある決まった特徴を示す地形にあわせて低地植生、高山植生、海浜植生、水辺(すいへん)植生などと表現する。さらに相観的なまとまりとして植物集団を表現する場合には、森林植生、草原植生、荒原植生などともいう。また、植生をなんらかの規準によって類型化し、単位づけたときには植物群落とよぶ。
 植生の成立は、以下に述べるようなさまざまなレベルの環境要因によって支配される。広域的な環境要因としては、気温、降水量などの気候要因があげられる。一般に気温が高く、降水量にも恵まれた低緯度地帯では植生はよく発達するが、高緯度地帯や、内陸部の寡雨地域などではその発達は悪くなる。局地的なレベルの環境要因としては、地形、地質、地下水位などの地形的要因と、土壌、水質などの土地的要因があげられる。海岸付近を例にとると、砂丘植生、塩沼地植生、断崖(だんがい)地植生などというように、地形・土地要因に条件づけられたさまざまな植生が狭い範囲の中に存在している。
 生物要因としては、野生動物や家畜の吃食(きっしょく)による植生の退行や偏行があげられる。しかし、植生にもっとも強い影響を与えるのは人為的要因である。植生の発達の長い歴史からみれば、人類の植生破壊はきわめて短期間に、広範囲に、かつ激しく行われてきている。森林伐採、火入れ、放牧、田畑の開墾、さらには道路造成、河川工事、海岸線の埋立てなどの大規模な土地改変によって、植生の破壊、変質、退行は現在も続けられている。[奥田重俊]

自然植生と代償植生

植生は人為的な影響の程度によって、自然植生と代償植生に分けられる。自然植生は理論的には人為的影響をまったく受けない植生をいうが、高山植生のほか、亜高山帯の針葉樹林、低地のよく発達した社寺林の植生なども自然植生として扱われる。代償植生とは、自然植生が人間の影響によってさまざまな人為植生に置き換わったもので、たとえば常緑広葉樹林域でのクヌギやコナラの薪炭(しんたん)林のほか、アカマツ植林、ススキ草原、路上のオオバコ群落、メヒシバの多い畑地雑草群落などがあげられる。なお、人間の干渉の緩やかな植生の場合は、半自然植生として別に扱われることもある。
 植生はさらに時間の要素をもとに、人間が影響を及ぼす直前の自然植生を原植生とよび、現在目前に存在する植生を現存植生とよぶ。また、現在の人為的な影響をいっさい停止した場合、その立地のもつ潜在的な能力を自然植生で表現した理論的な植生を潜在自然植生という。潜在自然植生は時間とともに変化するものであるから、潜在自然植生を示すときは、その調査時点で、現在の、または今日の潜在自然植生と厳密に表現しなければならない。潜在自然植生の推定は植生に関するさまざまな情報や知見などをもとに総合的に行われる。
 ある地域の植生を調べるためには、まず、地域内に生育するすべての植生型に対し、典型的な植分を選定して種組成に基礎を置く植物社会学的な植生調査を行う。得られた植生調査資料は、表操作を主とする室内作業によって客観的に植生単位を抽出する。すべての植生単位は種組成の類似性によって植生体系化が試みられ、地域内における植物群落相互の関係が明らかになる。さらに群落の植生図化によって、地域の植生の現状が明瞭(めいりょう)となる。このように、一地域の植物群落をすべて網羅し、記録したものを地域植生誌とよぶが、最近の環境問題の高まりとともに、一地方、または県市町などの自治体による地域植生誌が盛んに作成されるようになってきている。[奥田重俊]

植生図

植生、または類型化によって単位づけられた植物群落の具体的な広がりを地図化したものを植生図という。植生図は作製の目的や方法によって種類が異なる。現存植生図は現在存在している植生についての地図であり、植生の現況を知るうえでもっとも一般的な植生図として数多く作製されている。この場合、凡例として表現する植生単位は、群落の相観や優占種、種の組合せをもとにした群集などによって描かれ、ときに土地利用形態も加味される。原植生復原図は、人為的干渉の及ぶ以前の原地形と、そのうえに成立していた植生を理論的に復原して図示したもので、自然植生を凡例とし、比較的小縮尺で描かれる。潜在自然植生図は、現存するさまざまな植生が人為的干渉を排したときに共通してもつ潜在能力を理論的に推定して図示するが、凡例は自然植生で示され、しかも、群集または上級単位を含む植物社会学的な植生単位で表現される。潜在自然植生の植生図化は、現存の自然植生はもとより、二次林や残存木、雑草群落などすべての植生を手掛りとするが、残存する植生の少ない地域では、土地利用形態や土壌断面などからも判定される。しかし、宅地造成、湾岸埋立てなどの立地の改変の激しい地域では、潜在自然植生の推定がきわめて困難な場合も多い。
 植生図は、植物社会学の科学的な成果であるばかりではなく、自然環境の診断、自然保護や国土利用計画に対し、基礎的な資料として役だてられている。現存植生図から転化されたものとして植生自然度図があるが、これは植生単位を自然植生からの隔たりの度合いによって区分し、自然性の高低にいくつかの段階づけを行って示した図であり、普通、5~10段階に分けられる。このほか、立地の質や機能を図化した立地図の作製なども試みられている。[奥田重俊]

植生がもつ意味

植生は自然界における生態系のなかでの唯一の生産者として、また、多数の生物の遺伝子保存の資源として、もっとも基本的で重要な役割を演じている。また、植生の機能を考えると、防風、防雪などにみられる気象の緩和、土砂流出の防止、水源涵養(かんよう)や水質浄化作用などの災害防止機能などがもっとも重要なものといえる。さらに、植生を過去から現在までに与えられたさまざまな環境の総和とみなすならば、立地診断、とくに環境汚染などの人為的影響の質的指標とすることもできる。
 都市への人口の集中化、産業立地の拡大などの人間生活環境の悪化に対し、緑地の保全、形成の必要性が高まっている。緑地の適正な利用や正しい緑化を行うにあたっては、人間の共存者であり、人間の生活基盤を担う植生の正しい理解が必要である。植生が単なる「緑」ではなく、それ自身が生産し、消費し、発達する生き物の集団として都市内の環境保全緑地や災害時の緩衝地、あるいは公園緑地、レクリエーション・エリアなど、人間生活に必要不可欠な共存者としてみたときに、植生の重要性が理解されよう。[奥田重俊]
『宮脇昭編『日本の植生』(1977・学習研究社) ▽沼田真・岩瀬徹著『図説・日本の植生』(1975・朝倉書店) ▽中西哲・大場達之他著『日本の植生図鑑 森林』(1983・保育社) ▽矢野悟道・波田善夫他著『日本の植生図鑑 人里・草原』(1983・保育社) ▽宮脇昭・奥田重俊他編『改訂版・日本植生便覧』(1983・至文堂) ▽飯塚茂・菊池多賀夫著『植生群落とその生活』(1980・東海大学出版会)』

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世界大百科事典内の植生の言及

【気候】より

…この分類でとくに注意すべき点は気候の規模が小さくなるにつれて,現象の面積的な広がりが小さくなるだけでなく,上方の限界すなわち高さも低くなることと,気候の場所によるちがい(地域差)を生じる原因(気候因子)が異なることである。気候因子には,緯度,水陸分布,地形,地理的な位置,海流,植生などの地上被覆の状態などいろいろなものがあるが,中気候より規模の小さい気候では,小規模な地形(とくに高度)や地上被覆の状態がとくに重要で,緯度のちがいは問題にならない。 特定地点や地域の気候を知るためには,そこにある観測所の気候要素の平年値や極値を月別,あるいは年についてまとめた気候表やその値を地図上に記入して等値線を引くなどした気候図などの気候資料が必要である。…

【気候区分】より

…一つは,環境的・経験的なもので,気候環境の差異を忠実に反映する諸現象の分布から,逆に気候を区分する方法である。現象としては,植生,陸水,土壌などのほか,農作物,住居など人間が作り出したものによって気候を分類する試みもなされる。自然的現象でも人為的現象でも,気候によって生じた結果を用いるもので,とりわけ実用的なものは植生分布による区分法である。…

【植物群落】より

植生のうちで相観や種組成でなんらかの均質さがあり,生態学的な類型化ができるような植物の集団を指すが,単にある地域に生育する植物の集団という意味で植生と同義に用いられる場合もある。単一の植物からなるものを純群落という。…

※「植生」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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