翻訳|sandstone
堆積(たいせき)岩のうち砕屑岩(さいせつがん)の一種で、砂粒が集積し固まった岩石。ここで砂粒というのは、粒径が0.06~2ミリメートルのものをいい、普通、石英、長石、雲母(うんも)などの鉱物および岩石の細片からなる。砂粒は運搬され堆積する過程のなかで、円磨、淘汰(とうた)されて、いろいろな形や粒径をもつようになる。砂岩を構成する粒子の大きさから、さらに粗粒砂岩(粒径0.5~2ミリメートル)、中粒砂岩(0.25~0.5ミリメートル)、細粒砂岩(0.06~0.25ミリメートル)に細分されることもある。一般に砂粒のすきまは粘土物質を主とする泥質物で満たされているが、ときには炭酸カルシウム、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化鉄などの膠結(こうけつ)物質で満たされている。また細粒の火山噴出物と混合して凝灰質となることもある。粒子の大きさや種類、膠結物質の違い、孔隙(こうげき)の多少などにより、いろいろな外観や比重を示す。あらゆる地質時代に地層として存在し、他の砕屑岩や火山砕屑岩と互層する。砂岩の地層には、水流の動きを示す斜交層理や級化成層などの堆積構造や、層理面には流れの方向を表す底痕(ていこん)が残されている。ときに異常な堆積時の変形も残されている。こうした砂岩の性質および産状は、化石とあわせて、堆積時の古環境解析および古地理の復原などの重要な手掛りとなる。
砂岩の構成粒子および組織を規制する要因としては、供給地の地質、気候、風化作用、運搬媒質、鉱物および組織の成熟度、造山運動、堆積作用、続成作用などが考えられる。これらすべてすなわち生成史を反映させた分類は困難であるため、重点の置き方の違いから多様な分類案が出されてきた。かつては砂岩の性質は、砂粒を供給した源岩あるいは後背地の性質と造山運動で決まると考えて、砂粒間を埋める泥質物の基質を考慮せずに、主成分の石英、長石、岩石片の比で区分し、準平原のときから造山運動を経て後造山期にわたって対応関係が論じられた。しかし、その区分は堆積物の研究が進んだ現在では用いられていない。普通、砂岩は基質の量と鉱物組成から分類されている。基質量は、運搬媒質である水の粘性や密度を規定するために重要であると考えられるからである。砂岩は、基質量すなわち粘土物質が多く砂粒の大きさがそろっていない、いわゆる淘汰の悪いものと、粘土物質が少なく砂粒の大きさがそろった、淘汰のよいものとに大きく分けられる。前者がワッケwacke、後者はアレナイトarenite(arenyte)とよばれている。これらはさらに石英、長石、岩石片の多少から、石英質、長石質、石質に分けられる。いまでは、砂粒子の化学組成の分析や放射年代の測定から、供給源となった地質体が詳しく推定されるようになっている。
[斎藤靖二]
『レイモンド・シーバー著、立石雅昭訳『砂の科学』(1995・東京化学同人)』
砂粒が膠結(こうけつ)されてできた岩石で,砂粒(径1/16~2mm)が50%以上を占める砕屑岩をいう。おもに火山砕屑物からなるものは火山砕屑岩と呼び,砂岩には含めない。色は通常,黄~灰白色で,風成のものは赤色を呈することがある。一般に砂粒としては石英が最も多く,長石がこれに次ぐ。岩片の多いものもある。砂以外の粒径の砕屑物を比較的多く含む場合には礫質砂岩,泥質砂岩などと呼ぶ。野外の呼称では,前者はレキ岩,後者は泥岩に含めていることが多い。膠結物質の種類によっては泥質,石灰質,ケイ質,炭質,凝灰質砂岩などと呼ばれる。粒径による分類では,平均粒径によって,極粗粒砂岩(2~1mm),粗粒砂岩(1~1/2mm),中粒砂岩(1/2~1/4mm),細粒砂岩(1/4~1/8mm),極細粒(微粒)砂岩(1/8~1/16mm)に区分される。野外での呼称として定性的に使用している場合には,実際より細粒に判定していることがある。鉱物組成による分類では,膠結分(泥質基質)が15~75%までをワッケwacke(75%以上は泥岩),15%以下をアレナイトareniteに分け,さらに石英,長石,岩片の量比によって細分する。アルコースarkoseとは長石,石英を多量に含むアレナイトで,花コウ岩や片麻岩地帯から運ばれてできた砂岩をいう。グレーワッケgreywackeは泥質基質を多く含み,灰色で堅硬な砂岩をいう。アルコースが造山時に形成されるのに対して,グレーワッケは地向斜期にタービダイトとして形成されると考えられてきた。現在ではグレーワッケのかわりにワッケの語を用いることが多い。砂岩の熟成度maturityは,石英量,砂粒の円磨度,泥質基質の量できめられるが,大陸では高く,日本のような造山帯では低い。砂岩の粒度組成からは運搬・堆積の機構を,鉱物組成からは供給地の岩石を推定することができる。また,砂岩層の示すさまざまな堆積構造からは堆積盆の復元がなされるので,砂岩は地史を知るうえで重要で,多くの研究がある。全堆積岩の1/4を占める。
執筆者:徳岡 隆夫
砂岩は,ヨーロッパやアメリカでは花コウ岩や大理石と並んで建築や装飾用石材として多用されているが,日本では,土木用材としてはともかく,見るべき建築用材は産しない。わずかに,群馬県高崎市の旧吉井町の第三紀層から採石される多胡石という粗粒淡褐色の木目模様の石や,大阪府阪南市付近の白亜紀層に産する緑灰色の和泉石などを数えるにすぎない。近年,インドのラージャスターン州東部の台地で採石される先カンブリア時代末から古生代初めにかけての砂質ケツ岩の,建築での使用が日本で目だつ。これは,北インドの記念物的建造物に広く使用されている石であるが,濃紅色,ベージュの2色がある。ともに堆積面に沿って刃を入れ,薄く剝いで得られた割肌のまま,自然の味を生かして用いられる。
執筆者:矢橋 謙一郎
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出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…なお安山岩や凝灰岩の石材は,日本ではありふれているが,外国ではあまり使われていない。(4)砂岩 日本では良質な砂岩を産せず,土木用材は別として,建築用としては輸入材以外にはほとんど使われていない。しかしヨーロッパやアメリカでは均質な良材を大量に産し,建築用石材としても大いに利用されてきた。…
※「砂岩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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