日本大百科全書(ニッポニカ) 「タタ鉄鋼」の意味・わかりやすい解説
タタ鉄鋼
たたてっこう
Tata Steel Co., Ltd.
インド最大の民間鉄鋼会社でタタ財閥の中核企業。本社所在地はムンバイ。
タタ鉄鋼の基礎は1907年にジャムシェトジー・ヌッセルワンジー・タタJamsetji Nusserwanji Tata(1839―1904)により築かれた。彼は大英帝国の支配に反発する大衆的運動の高揚を背景にして、全額インド人出資資金による一貫製鉄所をインド東部、ビハール州のサクチ村(現、ジャムシェドプル)に創設した。さらに息子のドラブジー・タタDorabji Tata(1859―1933)、創設者の甥(おい)の子にあたるジェハンギール・ラタンジー・ダダバイ・タタによって今日までの路線が敷かれた。同社の事業は粗鋼、圧延鋼、棒鋼、薄板、半製品などの鉄鋼製品の生産や販売が中心である。また創始者のジャムシェトジー・ヌッセルワンジー以来日本との友好関係は深く、1968年には日本の淀川鉄鋼との間に合弁会社タタ・ヨドガワTata-Yodogawa Ltd.(TAYO。現、タヨ・ロールズTayo Rolls)を設立。1992年にTAYOはオーストリアに技術移転を含む助成活動も行った。
タタ鉄鋼は、2007年イギリスの鉄鋼メーカー、コーラス・グループを買収し、傘下におさめた。この結果、タタ鉄鋼グループはアルセロール・ミッタル、新日本製鉄(現、日本製鉄)、韓国のPOSCO(ポスコ)に次いで世界第4位の鉄鋼メーカーとなった。2009年3月末の総資産は5874億ルピー、営業収入は2684億ルピー、従業員数約3万5000人。
[上川孝夫]