改訂新版 世界大百科事典 「ダーウィンハナガエル」の意味・わかりやすい解説
ダーウィンハナガエル
Darwin's dwarf frog
Rhinoderma darwini
雄が幼生を育児する変わった繁殖習性をもつハナガエル科のカエルで,ビーグル号航海中のC.ダーウィンによって発見された。現地名はバケロ。チリ,アルゼンチン南部に分布し,体長3cmほどの小型。体は枯葉形で,吻(ふん)部が細長くのびて小突起となっている。広葉樹林にすみ,体色は黄褐色から緑褐色まで変異が多い。食性はよくわかっていない。繁殖期には雌のまわりに数匹の雄が集まり,産卵された20~30個の卵のそばで,10~20日間ほど見守る。そして雄は幼生が孵化(ふか)する直前の卵を舌で拾い上げ,鳴囊の中に流し込む。ときには1匹の雄が17個もの卵をのむこともある。幼生は鳴囊の中で発育を続け,雄の鳴囊は幼生でいっぱいとなる。すべての幼生が変態を完全に終了するまで,鳴囊のなかで育てられる。幼生が外に出るのは子ガエルとなってからである。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報