改訂新版 世界大百科事典 「チャンシッター」の意味・わかりやすい解説
チャンシッター
Kyansittha
生没年:1040-1113
ビルマ(現,ミャンマー)のパガン朝第3代の国王。在位1084-1113年。碑文に現れる名前はティーラインミン。サンスクリットの称号はシュリ・トリブワナ・アディトヤ・ダンマ・ラージャ(吉祥三界太陽法王)。チャンシッターの名は,〈チャン〉がパガン時代のビルマ語カランを語源として〈官吏〉を意味し,〈シッター〉が〈兵士〉の意味で,その出自が非王族であることを示唆している。アノーヤターの死後王位を継承したソールーがモン族の反乱で殺された後,不安定となった国内を収拾するため推戴されて王位に就いた。王は政治的国民統合,とりわけビルマとモン両民族の融和,近隣諸国との友好,民生の安定向上を推進し,各地にパゴダ寺院を建立するなど,仏教の普及にも力を注いだ。しかし現存する碑文によると,自らビシュヌ神の生れ変りと称したり,灌頂式にビシュヌ神やガハパティ神への供犠を行うなど,ヒンドゥー教的要素もそこにはみられる。
執筆者:大野 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報