改訂新版 世界大百科事典 「アノーヤター」の意味・わかりやすい解説
アノーヤター
Anawrahta
生没年:1014-77
ビルマ(現,ミャンマー)最初の統一国家パガン朝の実質的創建者。9世紀の中頃からパガン地方を領有してきた支配者の家柄に生まれ,父クンソーチャウンビューを奪した義兄ソウカテーを倒して,1044年領主の地位を確保した。領域は,当初イラワジ川中流域に限定されていたが,周辺諸地域を徐々に勢力下に引き入れて政治的統合を達成する一方,チャウセー地方の河川,メイティーラ地方の湖沼を利用して灌漑網を整備,国力の充実に努めた。57年ビルマ南部にあるモン族の国スダンマワディの都タトンを攻撃,国王マヌハ以下モン人捕虜3万人を中部ビルマへ連行した。この遠征によってパガンに上座部仏教とモン文化とが伝えられ,密教的色彩の濃い既存の大乗仏教や部族神崇拝,竜神信仰を土台とする固有の信仰は衰退した。ビルマ語はモン文字で書かれるようになり,多数の仏塔や寺院がモン人職人の手で建立された。王は,南西ビルマのウェーターリーや東部のシャン諸地方にも出兵して版図を拡大,71年にはセイロンとの間にも交流をもった。王の軍事行動成功の秘訣は,もっぱら象部隊の活用にあった。
執筆者:大野 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報