改訂新版 世界大百科事典 「ツメナシコウモリ」の意味・わかりやすい解説
ツメナシコウモリ (爪無蝙蝠)
smoky bat
thumbless bat
翼手目ツメナシコウモリ科Furipteridaeの虫食性コウモリの総称でツメナシコウモリFuripterus horrensとマルミミツメナシコウモリAmorphochilus schnabliの2属2種がある。これらはサシオコウモリ科あるいはヒナコウモリ科に含まれることがあるが,アシナガコウモリ科に近縁である。前肢第1指のつめが痕跡的なのでこの名がある。新世界の特産で,コスタリカからブラジルまで,およびトリニダードに分布する。前腕長3~4cm,頭胴長4~6cm,尾長2.5~4cm。体は小さく,手足は繊細で,体重3~5gにすぎない。多くの小型の虫食性コウモリでは前肢の第1指の指骨は膜から遊離しているが,この類では短小で,機能をもたないつめだけが膜外に出ているにすぎない。左右の耳介は離れ,その形は漏斗状で幅広く,目を覆っている。吻端(ふんたん)はブタの鼻に似て,鼻孔は上方に向く。体の背面は灰褐色または暗灰色で腹面は淡い。洞窟または熱帯雨林に小群ですみ,昆虫を捕食する。化石はまだ発見されていない。
執筆者:吉行 瑞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報