改訂新版 世界大百科事典 「ティンギアン族」の意味・わかりやすい解説
ティンギアン族 (ティンギアンぞく)
Tinggian
フィリピンのルソン島北西部山岳地帯に分布し,ティンギアン語を母語とする種族。人口約3万。かつて首狩りの習俗を有した種族として知られる。ティンギアンという呼称はマレー語のティンギtinggi(〈山〉の意)に由来し,スペイン人がこの種族の公式名として初めて用いた。ティンギアン自身は自分たちをイトネッグItneg(〈奥地の出身者〉の意)と呼ぶ。一般に高地ティンギアンと渓谷ティンギアンに二分される。前者はアブラ州の東部と北部からイロコス・ノルテ州南部の高地にかけて散在する。小集落をなして住み,貧富の差はほとんどみられない。焼畑農耕を営み,陸稲やいも類を中心に栽培する。渓谷ティンギアンはアブラ州中央部からイロコス・スル州北部にかけての渓谷地帯に居住する。比較的規模の大きい村を形成し,住民は上下二つの階層に分けられる。灌漑設備を伴う階段式水田を発達させ,水稲を栽培する。
執筆者:宮本 勝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報