日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ディオン・クリソストモス
でぃおんくりそすともす
Dion Chrysostomos
(40ころ―112以後)
ギリシアの弁論家、文章家。ビティニア(黒海南岸)生まれ。クリソストモスとは「(雄弁なる)黄金の口」の意のあだ名。ドミティアヌス帝のとき政治犯として追放され約15年間辺境を放浪したが、ネルバ(ネルウァ)およびトラヤヌス帝治下には復権してローマや生国で弁論家、説教者として活躍した。内容よりレトリックを重視する当時の文人学者の行き方を捨て、自らはプラトン、キニコス派、ストア派の流れをくむ哲学の徒であろうと心がけた。弁論術、文学、政治、道徳などを扱った弁論80編(うち2編は弟子の作)が現存している。
[中務哲郎 2015年1月20日]