出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
フランスの作家ポール・ブールジェの長編小説。1889年発表。グレルーは尊敬する師アドリアン・シクストの科学的な決定論を実験しようとして貴族の令嬢を誘惑する。彼女には婚約者があったが誘惑に負けて身を任せ、情死まで決心する。だが彼の日記を見て彼の真意を知り自殺する。そして彼も彼女の兄に射殺される。弟子の死を知った師はこの悲劇の原因は自分にあったことを痛感し、科学の絶対性に疑いを抱き、これまで否定していた神秘的なものに心を打たれて神に祈りを捧(ささ)げる。この師は実証主義の代表者テーヌがモデルといわれ、この作品は実証主義の危険を説くとともに、研究発表の際の学者の責任を追及したものとして、当時、大きな問題を提起した。
[新庄嘉章]
『山内義雄訳『弟子』(『世界文学全集第二集 19』所収・1956・河出書房)』
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…出生時に頼む〈取上親〉〈名付親〉,また病弱な子を儀礼上いったん捨て子する形をとり,あらかじめ頼んでおいた人に〈拾い親〉になってもらうことによって健康な子になると考える風習もあったが,最も一般的には,成人するとき男は烏帽子親(えぼしおや),女は鉄漿親(かねおや)を頼み,また結婚するときに仲人親を頼むというように,仮親に依存することであった。ムラや生まれ育ったマチを離れ,生家を離れて他のマチの商家や職人の家の家長を親方とすることは,子飼い住込みの丁稚(弟子)奉公人となるときに,その家の子方となることを意味した。生家を去って主家のコとなるのであるから,家業経営の親方である主家の家長は彼らに新しい名,丁稚としての名を与えた。…
…これは彼の青春に強烈な影響を及ぼしたフランスの詩人,小説家,思想家たちを論じ,時代の精神的病患の徴候と動機を探ろうとしたものである。道徳の病患を分析し,それからの治癒を目ざす彼は,やがて小説の創作にも励み,《アンドレ・コルネリス》(1887),《弟子Le disciple》(1889)等で作家的成功を収めた。なかんずく後者はテーヌ流の実証科学至上主義への挑戦状ともいうべき小説であり,著作家の道徳的責任を追究した秀作である。…
※「弟子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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