改訂新版 世界大百科事典 「デイノテリウム」の意味・わかりやすい解説
デイノテリウム
Deinotherium
ゾウに似た大型の哺乳類で,長鼻類の絶滅属。類縁のプロデイノテリウム属Prodeinotheriumとともに長鼻目の一つの亜目(デイノテリウム亜目)がつくられ,長鼻類の主流であるマストドン亜目やゾウ亜目とはきわめて初期に別系統として分かれたものとされる。体長は3m前後,肩高約3m,頭の形はゾウと異なり短く平たい。とくに上顎にきばがなく,下顎の先が下方に垂れ下がり,その先端にきば状の長い切歯が下後方に伸びているのが特徴である。
この動物の正体は,1908年にボヘミアで全骨格が発見されるまではわからず,バク,カバ,カイギュウなどの仲間で,水生の動物と考えられていた。化石としては,東アフリカの中新世前期のものが古いが,中新世中・後期にはヨーロッパと南西アジアで繁栄した。しかし,ほかの長鼻類とちがって東アジアやアメリカ大陸には移動していない。アフリカでは更新世前期まで生き残った。その名は,ギリシア語の〈恐ろしい〉とか〈強力な〉という意のデイノスと〈獣たち〉の意のテリウムとに由来する。
執筆者:亀井 節夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報