日本大百科全書(ニッポニカ) 「トトナカ」の意味・わかりやすい解説
トトナカ
ととなか
Totonaca
メキシコ中東部、ベラクルス州中部のメキシコ湾岸からプエブラ州北部の山間部にかけて居住する民族集団。言語はマヤ・トトナカ語群トトナカ語族。5歳以上の人口は約12万5000人(1970)。
紀元600年ごろ、現在のエル・タヒン遺跡を中心に古典期文化を開花させ、その後12世紀にはトルテカ、14世紀にはアステカの侵略を受けた。スペイン人とは1522年に接触し、翌年からフランシスコ会によるキリスト教の布教が開始された。スペイン植民地時代ののち19世紀メキシコ独立以後も原住民反乱が頻発した。
地域的には高温多湿な海岸平野と温暖な山間部に分かれ、いずれもトウモロコシ、豆を基盤に、前者ではバニラ、サトウキビ、後者ではコーヒーを産する。社会の基本単位は核家族であり、社会関係においてはコンパドラスゴ(儀礼的親族)関係が重要。伝統的な政治宗教組織は山間部の一部を除いてほぼ解体しているが、土着的な動物霊の信仰が残存している。近年は、ボラドーレスという伝統的宗教儀礼が、おもに観光目的で再評価され、トトナカの特徴的なシンボルになりつつある。
[石井 紀]