改訂新版 世界大百科事典 「トトナコ」の意味・わかりやすい解説
トトナコ
Totonaco
メキシコ中部,プエブラ州の北部山地とベラクルス州の北部低地に住むマクロ・マヤ語系の原住民。人口約25万,その半数以上がスペイン語も併用する。雨季と乾季の区別のある涼しい山岳高地と蒸し暑い海岸低地の間には顕著な文化の差異が見られ,低地トトナコ文化には環カリブ海文化の要素も観察される。家々が密集した村落を形成する高地民は,自給的なトウモロコシ,豆,カボチャの栽培と家禽飼育に従事するが,低地民は散在する農家に住み,自給用食料のほか商品作物やはちみつ,バニラなどを生産し,経済的にはやや豊かである。1519年スペイン軍がメキシコ湾岸に上陸した時,低地トトナコの町センポアラCempoalaの首長は戦いを挑まずに降服し,流血を避けた。原住民の神殿を改築して,メキシコ地方最初のカトリック教会が建立されたのも,センポアラである。南部を除き,その後トトナコの居住地域はほとんど変化していない。低地のパパントラの町は,ボラドールと呼ばれる宗教儀礼で名高い。
執筆者:落合 一泰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報