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首長 しゅちょうchiefs

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

首長
しゅちょう
chiefs

さまざまな社会集団にあって,その指導者,支配者,あるいは代表者として社会的承認を得ている者の総称。なんらかの権威をもっている。権威の源泉には,狩猟採集民バンドの指導者のように,経験や技能などの個人的資質に基づくもの,植物栽培民や牧畜民の村落や社会集団の首長のように,特定の出自なり身分に基づくものなどがある。通常首長は統一を象徴する儀礼的な存在でもあり,人々の繁栄や作物の豊穣をもたらす宗教的な力をもっていると考えられている。またときに世襲的でもある。首長の機能は,その集団成員の行動を一定の枠内に強制し,協調的に管理し,争いを解決することであり,複数の村落やリニージが同盟して首長を選出することもある。首長が直属の専門化された行政・司法の執行機関を組織している場合は王と呼べる。(→首長制

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知恵蔵の解説

首長

普通地方公共団体の長である都道府県知事市町村長の一般的な呼称。外部に対して地方公共団体を代表すると同時に、議決機関(地方議会)に対する自治体の執行機関でもある。戦後改革によって知事が国の官吏から公選制に改められ、執行部の長として議会とは独立に選出される制度(首長主義二元代表制)に改められたことは、それまでの行政中心の中央(国)と地方との関係に大きな影響を与えた。現在では、中央と地方の関係の政治的側面が重要になっている。1960年代後半以降の革新自治体興隆、その後の国政の転換や、90年代後半からの無党派知事の台頭、マニフェストの導入などがある。地方分権の進展に伴い、首長のリーダーシップ重要性はさらに高まりつつある。

(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

くび‐ちょう〔‐チヤウ〕【首長】

しゅちょう(首長)2」に同じ。「市長(しちょう)」と混同を避けるための語という。

しゅ‐ちょう〔‐チヤウ〕【首長】

集団・組織を統率する長。かしら。おさ。「部族の首長
行政機関独任制長官。特に、内閣の代表者としての内閣総理大臣。都道府県知事・市町村長などをさすこともある。くびちょう。
カタールクウェート、またアラブ首長国連邦を構成する各首長国の元首の称。アラビア語の「アミール」の和訳

ひと‐ごのかみ【首長/魁帥】

上代、一群の人の長。首領。
「自ら―となりて、穴を掘り堡(おき)を造りて常に住めり」〈常陸風土記

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大辞林 第三版の解説

くびちょう【首長】

〔「市長」との聞き間違いを避けるための語という〕
「しゅちょう(首長)」のこと。

しゅちょう【首長】

上に立って集団や団体を支配・統率する人。かしら。
行政組織における独任制の長官。内閣総理大臣や、地方公共団体の長。 「 -選挙」
クウェート・カタール・オマーンなど、二〇世紀後半にイギリスの保護下から独立したアラビア半島東岸のイスラム諸国の君主。
酋長 」に同じ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

首長
しゅちょう
chief

人類学では従来、伝統的な政治単位の長をさすのに用いられてきた。その用いられ方はかならずしも厳密なものではないが、一般に、狩猟採集民のバンドや部族社会における、個人的な資質や人格に基づく一時的でインフォーマルなリーダーやビッグマン、リネージの長老や小地域共同体の長などと異なり、より制度的に確立したものをさし、一方で、官僚的な支配機構の長としての王とも漠然と区別されている。
 多くの首長制社会で、首長の地位は儀礼的には際だたせられていたが、かならずしも大きな政治的権力を伴ってはいなかった。アフリカやオセアニアでは、首長は、社会に「概念的な中心」を与えるという点にその主要な役割があった。首長はしばしば人々の統一の象徴で、大地と人々の繁栄に責任をもち、これを保証する儀礼をつかさどる。首長の健康状態が社会や自然の秩序に直接影響を及ぼすと信じられている所も多く、首長の老衰や病気が社会の繁栄を損なうとして、事前に首長を殺し新たに次の首長を選ぶという、いわゆる「王殺し」の慣行もしばしばみられた。また気候の不順や作物の不作が首長のふるまいのせいにされることも珍しくなかった。
 首長位はまた、再分配経済の中心ともなっていることが多い。首長のもとには全国から貢納や贈り物の形でさまざまな財が流入するが、首長はこれらをふたたび人々に分け与える。首長の人々に対する主要な義務の一つに祭儀の席での大盤ぶるまいや気前のよい贈り物、危急時における援助などをあげる社会も多い。自ら得る以上に与えねばならぬことさえあり、南西太平洋のティコピア島の首長は、人々の期待にこたえるために、自分の身内の協力に頼り、また自ら人一倍働かねばならなかったという。
 首長位の概念的、宗教的中心性に政治的中心性がどのように結び付くかは、社会ごとに一様でない。世俗的権力と宗教的権威が2人の首長、あるいは二つの異なる役職に分離している例もあれば、1人の人間がそれらを種々の割合で兼ねていることもあり、首長の政治的権力について一般化は困難である。[濱本 満]

首長制

人類史の発展段階における首長制の概念は、人類学と歴史学において提起されている。新進化主義人類学者のサービスElman Rogers Service(1915―96)、サーリンズMarshall D. Sahlins(1930― )は、未開社会から文明社会への過渡的段階として首長制chieftainshipを提示した。サービスは、民族誌資料を整理して近現代世界の未開的諸社会の多様な形態を、社会組織における社会文化的統合のレベルにより3段階に区分した。すなわち(1)歴史的には旧石器時代の狩猟採集民に相当するバンド(band、群)、(2)同じく新石器時代の農耕・牧畜民に相当する部族(tribe)、(3)生産の分化と生産物の再配分が行われ、経済的のみならず、社会的・政治的・宗教的機能も果たす中央機関(首長という公職の成立)を有するが、法的権力を行使する国家機構により統合されるレベル(primitive state、未開国家)には到達していない首長国chiefdomである。またサーリンズは、部族の発展の極に首長国を措定する。
 一方、歴史学において首長制を社会構成史の一段階に位置づけたのが石母田正(いしもだしょう)(1912―86)である。石母田は、ポリネシアのサモアとトンガの首長制社会および6~8世紀の古代日本の在地首長制を分析して、首長制の生産関係は、カール・マルクスが『経済学批判要綱』の「資本主義的生産に先行する諸形態」において階級社会におけるアジア的共同体に対応する生産関係として提示した総体的奴隷制の範疇(はんちゅう)に相当すること、古代東洋的専制国家の下部構造であることを明らかにした。首長制の生産関係とは、直接生産者の私的所有が十分に展開しない段階で階級社会へ転化したもので、首長が直接生産者から徭役(ようえき)労働と貢納物を収奪する経済的関係であり、共同体は首長によって代表されるものである。日本の古代国家は、在地首長層と民戸のかかる生産関係のうえに成立したものである。石母田の首長制の生産関係をめぐって、社会構成史研究からは、国家的奴隷制を古代アジアに措定する立場からの批判、首長制の生産関係は奴隷制の一種としての総体的奴隷制ではなく、マルクスが『剰余価値学説史』で奴隷制・農奴制から区別した第三の範疇としての「政治的隷属関係」としてより積極的に規定すべきであるとの説、理論的根拠としたリチャード・ジョーンズ『地代論』のライオット地代論への批判などがあり、また人類学との関係からは、日本古代の首長制は律令(りつりょう)制国家成立以前の氏族制の段階としてとらえるべきであるとの説、人類学の首長制論の摂取の方法の問題などがあり、論争が続いている。[石上英一]
『綾部恒雄編『文化人類学15の理論』(中公新書) ▽サーヴィス著、松園万亀雄訳『未開の社会組織』(1979・弘文堂) ▽サーヴィス著、増田義郎監訳『民族の世界』(1979・講談社) ▽石母田正「民会と村落共同体――ポリネシアの共同体についてのノート(一)」(『歴史学研究』325号所収・1967・青木書店) ▽石母田正著「東洋社会研究における歴史的方法について」(『岩波講座 世界歴史30』所収・1971・岩波書店) ▽石母田正著『日本の古代国家』(1971・岩波書店) ▽M・サーリンズ、E・サービス著、山田隆治訳『進化と文化』(1976・新泉社) ▽E・サービス著、松園万亀雄訳『未開の社会組織』(1979・弘文堂) ▽M・サーリンズ著、山本真鳥訳『歴史の島々』(1993・法政大学出版局)』

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