日本大百科全書(ニッポニカ) 「トレント最後の事件」の意味・わかりやすい解説
トレント最後の事件
とれんとさいごのじけん
Trent's Last Case
イギリスの推理作家E・C・ベントリーの古典的本格推理小説。1913年刊。滞英中のアメリカ財界の大立て者マンダースンが殺害される。探偵フィリップ・トレントは捜査を進めるうちに、マンダースンの未亡人メーベルの美しさに心ひかれるようになる。だが、やがて事件には恐ろしい真相が隠されていることに気づく。しかしそれもまた皮相な解釈で、そのまた奥に思いがけない真相があった。それ以前の推理小説の通俗の殻を破り、人間の感情の機微に迫った近代推理小説の先駆けとして、高く評価されている。
[梶 龍雄]
『大久保康雄訳『トレント最後の事件』(創元推理文庫)』