推理小説(読み)スイリショウセツ

デジタル大辞泉 「推理小説」の意味・読み・例文・類語

すいり‐しょうせつ〔‐セウセツ〕【推理小説】

主として犯罪に関係する秘密が、論理的に解明されていく過程の興味に主眼をおいた小説。ポーの「モルグ街の殺人」に始まるとされる。探偵小説。ミステリー。
[類語]ミステリーサスペンススリルスリラーホラー

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精選版 日本国語大辞典 「推理小説」の意味・読み・例文・類語

すいり‐しょうせつ‥セウセツ【推理小説】

  1. 〘 名詞 〙 読者自身も推理や解決の興味をそそられるような事件や状況を設定して、徐々にそれが解かれていく過程のおもしろさを主眼とする小説。探偵小説の形をとることが多い。ミステリー。
    1. [初出の実例]「私は推理小説を二ツ書いて、この犯人を当てたら賞金を上げるよなどと大きなことを言ってきたが」(出典:安吾巷談(1950)〈坂口安吾〉湯の町エレジー)

推理小説の語誌

明治二〇年代以降、文学ジャンルの一つとして「探偵小説」の名称が広まるが、「当用漢字表」に「偵」の字が入らなかったため、昭和二一年以降はその同義語として「推理小説」の語が一般化した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「推理小説」の意味・わかりやすい解説

推理小説
すいりしょうせつ

このジャンルの文学作品の総称としては、推理小説detective storyとミステリーmysteryということばが現在使われているが、ここでは同義語として扱う。推理小説の定義としては、江戸川乱歩の「主として犯罪に関する難解な秘密が、論理的に、徐々に解かれていく経路のおもしろさを主眼とする文学」というのが代表的である。乱歩は、おもしろさの条件として、(1)発端の不可解性、(2)過程のサスペンス、(3)結末の意外性、の三つをあげている。すなわち乱歩の定義の対象とされる推理小説とは、トリック本位のいわゆる本格推理小説のことである。しかし現在の推理小説は、本格推理小説以外にも、スパイ・スリラーやハードボイルドなど多種多様なミステリーを包含しており、広義の推理小説を簡潔に定義することは事実上不可能といえよう。

[厚木 淳]

推理小説の種類

おおよそ次の八つに分類できる。

〔1〕本格推理小説 トリック本位の作品で、謎(なぞ)の提出、推理、合理的解決という、推理小説本来の基本的形式を踏んだもの。

〔2〕倒叙推理小説 本格物を裏返ししたもので、犯人とその犯行が冒頭で明示され、次に探偵が登場して犯人を推理するという構成の作品。したがって読者の興味は「フーダニット」(Who-dunit 犯人はだれか?)ではなく、探偵がいかにして完全犯罪の欠陥を暴露するかという推理の過程に置かれる。

〔3〕ハードボイルド 禁酒法とアル・カポネが象徴する狂乱の1920年代の末期、アメリカに登場した流派で、ヒーローである私立探偵の強烈な個性、簡潔でスラング(俗語)を多用した独得の文体、非感傷的なタフ・ガイの孤独な世界などが特徴で、トリックは重視せず、リアルな人物描写が作品の根幹となっている。

〔4〕スパイ・スリラー 第一次世界大戦前の英独間の国際謀略に取材した型のスリラーに始まり、とくにこの分野はイギリスの独壇場である。この二大国間の抗争という図式は、その後もアメリカ(CIA)とソ連(KGB)の謀略戦という形で引き継がれた。犯人と探偵にかわって、ここで知恵比べをするのは、スパイとカウンター・スパイである。

〔5〕サスペンス小説 事件の謎解きと並行して、登場人物の心理的なスリルやサスペンスの描写に重点を置いたもので、独創的なトリックの枯渇に対応して出現した推理小説。

〔6〕法廷小説 法廷が舞台となり、被告の無実を証明する弁護人と検察側が丁々発止(ちょうちょうはっし)の論戦を交え、とくに弁護人の巧みな反対尋問が見どころの一つとなる。

〔7〕警察小説 従来の推理小説が名探偵や名捜査官を主人公とするのに対し、組織としての警察の捜査方法とそのチームワークを描くもので、第二次世界大戦後に台頭したリアリズムの一種。

〔8〕冒険ミステリー 以上のどの流派にもあてはまらないが、作家と作品の数のうえから無視できない一連の作品。事件の謎にアクションと冒険味、ないしは怪奇性を加えたもので、古くはモーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンものから現在のアリステア・マクリーンやクライブ・カッスラーClive Cussler(1931―2020)の作品まで連綿と続いている。文字どおり、冒険小説に推理小説的要素を加味したものである。

[厚木 淳]

海外の推理小説

推理小説は1841年に発表されたE・A・ポーの『モルグ街の殺人』に始まる、というのが今日の定説である。単に犯罪や推理を主題にした作品はそれ以前にも多くみられる。とくに18世紀イギリスのゴシック・ロマンが広い意味で母胎とも考えられる。しかし推理の論理性と解決の合理性を近代小説に導入し、この形式を創始したのはポーが最初である。しかも天才的推理能力の持ち主である民間人(オーギュスト・デュパン)が凡庸な警察に先んじて犯罪事件を解決するというポーのパターンは、1世紀半たった今日でもいまだに多くの推理作家たちによって踏襲されている。

 ポーがアメリカで創始した推理小説を、ウィルキー・コリンズWilkie Collins(1824―1889)の後を受けてイギリスで完成させたのがコナン・ドイルである。これ以後、推理小説は英米両国が主導する形で世界に普及していく。名探偵の代名詞になったシャーロック・ホームズものの連載が『ストランド・マガジン』で始まったのはポーの『モルグ街の殺人』から50年後の1891年で、シャーロック・ホームズの商業的成功はたちまち多くの模倣者やライバルを生んだ。ホーナングErnest William Hornung(1866―1921)のラッフルズ、フリーマンのソーンダイク博士、オルツィの隅の老人、チェスタートンのブラウン神父らが19世紀末から20世紀初頭に生まれた。フリーマンは倒叙推理小説という新形式を創始し、チェスタートンは高踏的逆説を駆使して推理小説に高い文学性を与えた。フランスでは、コナン・ドイルよりも先にエミール・ガボリオEmile Gaborio(1832―1873)がルコック探偵ものの長編を発表している。20世紀に入ると、ガストン・ルルーとモーリス・ルブランという2人の作家が現れ、後者が生んだアルセーヌ・ルパンはシャーロック・ホームズと並ぶポピュラーな存在となった。

 本格推理小説はこうした成長期を経て、1920年代から1930年代にかけて「黄金時代」を築くことになる。当時のイギリスの主要作家と作品を列挙すると、クロフツの『樽(たる)』(1920)、A・A・ミルンの『赤い館(やかた)の秘密』(1922)、フィルポッツの『赤毛のレドメイン家』(1922)と『闇(やみ)からの声』(1925)、A・E・W・メースンの『矢の家』(1924)、クリスティの『アクロイド殺人事件』(1926)などがある。なかでもクロフツはアリバイ・トリックに創意をみせ、クリスティは名探偵エルキュール・ポアロを創造して「ミステリーの女王」とうたわれた。ディクスン・カーは密室や足跡トリックを精力的に追究し、フランシス・アイルズFrancie Iles(1893―1971。別名アントニー・バークリー)とリチャード・ハルRichard Hull(1896―1973)は倒叙推理小説を発展させて犯罪者の心理を解剖した。

 ポー以降、アンクル・アブナーものなどの短編作家M・D・ポーストMelvill Davisson Post(1869―1930)を数えるのみのアメリカ推理小説界に、1926年、彗星(すいせい)のようにバン・ダインが登場した。緊密な構想のもと整然とした論理を展開するその作風は、ペダンティックな文体と相まって大きな反響を巻き起こした。ちなみに、第二次世界大戦前の日本の推理作家にもっとも影響を与えたのはこのバン・ダインで、彼の登場とともに推理小説の主流はイギリスからアメリカへと移行した。バン・ダインの後を受けて登場したのがエラリー・クイーンで、本格ものの謎解きをさらに展開して「読者への挑戦」形式を完成させた。エラリー・クイーンとディクスン・カーは本格派の黄金時代を飾る最後の巨匠で、1930年代を境にして、独創的トリックの枯渇から本格派はしだいに低迷の方向をたどった。

 エラリー・クイーン登場と同年の1929年、ダシール・ハメットの『血の収穫』によってハードボイルド派というアメリカ独自のミステリーが登場した。謎解きよりも事件関係者のリアルな性格描写を重視し、乾燥した特異な文体による行動主義の作風は、1940年代に入ってレイモンド・チャンドラーによって受け継がれ、文学的にも高く評価された。1970年代から1990年代へかけての代表的作家にロバート・B・パーカー(1932―2010)とローレンス・ブロックLawrence Block(1938― )がいる。この系統の作家で、行動派の法廷小説を手がけたのがE・S・ガードナーであるが、現在活躍している法廷ものの書き手としては、ジョン・グリシャムJohn Grisham(1955― )とスコット・トゥローScott Turow(1949― )がいる。

 本格派の低迷、ハードボイルド派の台頭によって推理小説の世界にも多極化現象が生まれた。トリックにこだわらず特異な犯罪心理を追究するシムノンがフランスで頭角を現し、アメリカでも緊迫感に満ちたサスペンス小説の名手W・アイリッシュ(別名C・ウールリッチ)が登場し、1930年代の後半にはピーター・チェイニーPeter Cheyney(1896―1951)とハドリー・チェイスHadley Chase(1906―1985)がハードボイルド派のスタイルをイギリスに導入し、フランスでも隠語を多用したロマン・ノアールというギャング小説が生まれた。

 推理小説の一分野であるスパイ・スリラーはイギリスで発達した。20世紀初頭の英独抗争を主題にしたアースキン・チルダーErskine Childers(1870―1922)の『砂洲(さす)の謎』(1903)に始まり、ジョン・バカンの『三十九階段』からサマセット・モームの『アシェンデン』(1928)に至る系譜によって俗悪な冒険小説の域を脱したスパイ小説は、1930年代の後半、第二次世界大戦前夜の緊迫した国際情勢を背景に、初めて第一級の専門作家エリック・アンブラーを生み、これと時を同じくしてグレアム・グリーンも『密使』(1939)などの「エンターテイメント」によって、このジャンルの成熟に貢献した。

 第二次世界大戦の終結とともに世界各地に進駐したアメリカ軍は推理小説とSFを持ち込んだが、同時にペーパーバックによる大量販売という出版革命が、各国において娯楽文学としての推理小説の普及に大きな役割を果たした。アメリカでは正統ハードボイルドの担い手としてロス・マクドナルド、通俗ハードボイルドのミッキー・スピレーン、社会派ハードボイルドともいうべきW・P・マッギバーンWilliam Peter McGivern(1918―1982)が相次いで登場した。1950年代で注目されるのは警察小説の流行で、トマス・ウォルシュThomas Walsh(1908―1984)、ベン・ベンスンBen Benson(1915―1959)、エド・マクベイン、ヒラリー・ウォーHillary Waugh(1920―2008)らが輩出し、1960年代に入ると、スウェーデンの夫婦作家ペール・バールー‐マイ・シューバールの作品が人気を博した。短編ミステリーの分野でも、フレドリック・ブラウン、ヘンリー・スレッサーHenry Slesar(1927―2002)、ロアルド・ダールRoald Dahl(1916―1990)などが洒脱(しゃだつ)軽妙な作品を書いたが、この種のショート・ショートや「奇妙な味」の短編は、戦前にはほとんどみられなかったものである。

 独創的トリックの枯渇によって推理作家たちは既成トリックのバリエーションやコンビネーションを使うようになり、またトリックよりも動機が重視され、サスペンスとひねりのきいたプロットが中心になった。この傾向の作家としてフランスではボアロー・ナルスジャック、カトリーヌ・アルレーCatherine Arley(1924― )、セバスチャン・ジャプリゾSébastien Japrisot(1931―2003)らが注目を浴び、イギリスではジョイス・ポーターJoyce Porter(1924―1990)が作品全体をユーモアで味つけして特色を発揮した。さらに重厚な本格派のP・D・ジェイムズPhyllis Dorothy James(1920―2014)、本格物と平行してサイコ・スリラーを書くルース・レンデルRuth Rendell(1930―2015)と、2人の人気女性作家が登場し、またビクトリア朝を舞台にした時代ミステリーを得意とするピーター・ラブゼイPeter Lovesey(1936― )、「競馬シリーズ」のディック・フランシスも精力的に作品を発表した。

 東西両陣営の冷戦と暗闘を直接反映したのがスパイ小説である。イギリスでは1950年代にイアン・フレミングが「007シリーズ」を書いて一躍世界的流行作家になり、1960年代にはレン・デイトンとジョン・ル・カレの2人がリアリズム・スパイ小説を、1970年代にはフレデリックフォーサイスが登場してこの分野をリードした。A・J・クィネルA. J. Quinnell(1940―2005)、ブライアン・フリーマントルBrian Freemantle(1936― )、ジャック・ヒギンズJack Higgins(1929―2022)も国際的な謀略小説にストーリー・テラーの本領を発揮し、ケン・フォレットKen Follett(1949― )も新趣向のスパイ物で好評を博した。スパイ・スリラーの分野では伝統の強味であろうか、依然としてアメリカに比べてイギリスに一日の長があるといえる。またアメリカでは『レッド・オクトーバーを追え』(1984)で登場したトム・クランシーTom Clancy(1947―2013)がハイテク軍事スリラーという分野を開拓した。

 1970年代から1990年代へかけての推理小説の傾向で目につくのは、従来の奸知(かんち)にたけた理性的な犯罪者のかわりに、サイコティックな犯人の増加である。現代社会が、実はさまざまな狂気と隣り合わせに成立していることの反映がサイコ・スリラーである。

 誕生以来1世紀半を経過して、娯楽文学の領域で不動の地位を確立した推理小説は、今後も激動する世界情勢や社会生活を背景に多様な展開を続けていくであろう。

[厚木 淳]

日本の推理小説

文明開化の波にのってポーの『ルー・モルグの人殺し』が饗庭篁村(あえばこうそん)によって翻訳紹介されたのが1887年(明治20)、原作の発表から46年後である。明治20年代は翻訳(翻案)ミステリーが流行した時期で、黒岩涙香(るいこう)がボアゴベイFortune du Boisgobey(1824―1891)、ガボリオ、W・W・コリンズなどの長編推理小説を新聞に連載、読者の喝采(かっさい)を博したが、本格的創作推理小説を生むほどの機縁とはならなかった。大正時代に入ると、ポー、ドイルの影響を受けて谷崎潤一郎と佐藤春夫が推理小説的モチーフを取り上げて好短編をいくつか書き、岡本綺堂(きどう)も髷物(まげもの)推理小説『半七捕物帳』を書いた。しかし、いずれも近代社会のなかで緻密(ちみつ)な論理性を展開する推理小説とは異質のものであった。1920年(大正9)に創刊された雑誌『新青年』は読み物として翻訳推理小説を掲載するようになり、これが契機となって1923年に江戸川乱歩が処女作『二銭銅貨』を発表して国産の本格的推理小説が誕生した。乱歩は引き続き昭和初期にかけて優れた中・短編を発表して創作推理小説を確立したが、彼の成功に刺激され相前後して横溝正史(せいし)、角田喜久雄(つのだきくお)、甲賀三郎、大下宇陀児(うだる)、小酒井不木(こざかいふぼく)、夢野久作(きゅうさく)らが登場した。しかし彼らの作品は短編が多く、しかも推理や謎の分析を主とするものは少数で、その多くが怪奇幻想のファンタジー、もしくは探偵趣味を生かした犯罪小説の域を出なかった。1930年代になると、フィルポッツ、クロフツ、クイーン、E・C・ベントリーら英米のいわゆる「黄金時代」の名作が紹介され、とくにバン・ダインの影響のもとに浜尾四郎の『殺人鬼』(1931)、小栗虫太郎(おぐりむしたろう)の『黒死館殺人事件』(1934)という二つの長編が生まれた。また探偵小説芸術論を提唱した木々高太郎(きぎたかたろう)も『人生の阿呆(あほう)』(1936)を発表して創作推理小説もようやく長編時代を迎えた。しかしこうした成長期の動向も第二次世界大戦の勃発(ぼっぱつ)により封圧され、事実上、推理作家たちは執筆禁止同然の状態に置かれた。

 第二次世界大戦後、横溝正史を筆頭に坂口安吾(あんご)、高木彬光(あきみつ)が戦前の水準とは面目を一新する力作を発表し、島田一男、鮎川哲也(あゆかわてつや)がこれに続き、また山田風太郎(ふうたろう)、香山滋(かやましげる)らの異色作家も出現した。昭和30年前後から専門出版社が海外ミステリーの秀作を定期的に紹介するようになり、推理小説の隆盛に拍車をかけた。そして1957年(昭和32)、松本清張が『点と線』を発表して乱歩登場以後の国産推理小説に画期的変革をもたらした。トリック偏重を排したリアリズムに立脚する社会派推理小説の誕生で、これによって日本の推理小説は文学として成熟の度を一段と加えることとなった。新本格派ともいうべき多岐川恭(たきがわきょう)、土屋隆夫、笹沢左保(ささざわさほ)、佐野洋(さのよう)、森村誠一、スパイ小説の中薗英助(なかぞのえいすけ)、結城昌治(ゆうきしょうじ)、三好徹(みよしとおる)らが活躍し、さらに仁木悦子(にきえつこ)、戸川昌子(まさこ)に始まり、夏樹静子、小池真理子、宮部みゆき、高村薫、加納朋子(1966― )らに至る女性作家の系譜も戦後ならではの現象である。海外の動向と軌を一にして創作ミステリーも多様化し、小説の主題も従来の個人的な金銭欲や怨恨(えんこん)から、産業スパイや公害問題、汚職、国際犯罪と、社会的視野を広げたが、なかでも大岡昇平の『事件』(1977)はこれまで空白に近かった本格的裁判小説として評価された。また、多角化の一端として生島治郎、北方謙三、大沢在昌(ありまさ)のようなハードボイルド志向の作家たちも出現した。

 1980年代から1990年代へかけては、二つの動向が注目される。ひとつは独創的なトリックの枯渇と社会派ミステリーの流行により、一時低迷の兆しがあった本格(謎解き)推理小説の復権を目ざす、新本格派の作家たちの登場である。島田荘司(そうじ)、山口雅也(1954― )、京極夏彦、笠井潔(きよし)、綾辻行人(あやつじゆきと)(1960― )などである。もうひとつは従来からあったアドベンチャーフィクションの存在が、ここにきて顕在化したことであろう。これらの作品は前述の「推理小説の種類」〔8〕で述べた冒険ミステリーとはかなり性格を異にし、構想のスケールが大きく、舞台も国際的な広がりをみせている場合が多い。1989年(平成1)以降、日本推理作家協会賞を受賞した作家に限ってみても、船戸与一(ふなどよいち)、佐々木譲(じょう)、藤田宜永(よしなが)、真保裕一(しんぽゆういち)と、この10年で4人を数える隆盛ぶりである。謎解きとサスペンスを中心にした推理小説に加えて、スリルと(国際)謀略をテーマにした冒険小説の活況は、ミステリーということばが、ますます多様化している表れである。

[厚木 淳]

『ハワード・ヘイクラフト著、林峻一郎訳『探偵小説・成長と時代――娯楽としての殺人』(1961・桃源社)』『中島河太郎編著『現代推理小説大系 別巻2 ミステリ・ハンドブック』(1980・講談社)』『中島河太郎著『日本推理小説史』全3巻(1993、1994、1996・東京創元社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「推理小説」の意味・わかりやすい解説

推理小説 (すいりしょうせつ)

〈なぞを論理によって解明する操作をおもな筋とする小説〉というのが,穏当な定義であろうが,今日の現実を眺めると,これでは十分に包括しつくしているとはいえない。さらに〈推理小説〉という語自体,その意味するものが昔と現在では違っているし,この語と他の類似の語,例えば〈探偵小説〉〈ミステリー小説〉〈犯罪小説〉との関係も,時代によって変わってきた。そこで,まずこれらの用語と並行させつつ,〈推理小説〉の定義に新たに取り組むこととしよう。

 〈探偵小説〉は英語detective novel(長編の場合。短編の場合はdetective story)の訳語として,すでに明治時代から用いられた。〈探偵小説〉の定義としては,例えばD.L.セーヤーズの〈犯罪とその捜査を取り扱った小説のうち,なぞの設定とその解決が,もっぱら論理的操作によってのみ行われるもの〉(1928)という手本がある。しかし,当時からこの種の作品を〈本格的探偵小説〉と呼び,〈探偵小説〉はもっと広いもの,例えば論理的操作がほとんど欠けている小説やもっぱら行動とスリルだけの小説,あるいは,プロとアマを問わず探偵が登場するすべての小説などをも含むと考える立場があった。

 第2次世界大戦前の日本においては,〈探偵小説〉の語がほぼ独占的に用いられ,〈推理小説〉の語はほとんど見られなかった。しかし19世紀においてアメリカの作家E.A.ポーは,tale of ratiocination,すなわち直訳して〈推理(この場合は短編)小説〉という語をすでに用いている。これは上のセーヤーズの定義よりももっと狭いもの,純粋の推理作用による解決を扱った物語で,犯罪が関係しないパズルや暗号解読なども含む。したがって〈推理小説〉という概念はきわめて狭いものながら以前から存在したのであるが,イギリス,アメリカでも日本でもあまり一般には知られていなかった。

 日本で〈推理小説〉という語が,もっと広い意味で,以前の〈探偵小説〉の同義語として一般化したのは,第2次世界大戦後のことである。ひとつには,漢字制限により〈偵〉の字が一般に使われにくくなったからでもあるが,もっと大きな理由として,木々(きぎ)高太郎(1897-1969。林髞)の提唱があった。戦前の〈探偵小説〉があまりにも〈本格〉のなぞ解きに偏しすぎたと批判し,あくまで〈文学的小説〉でなければならぬと主張(そのためになぞ解きを強調する江戸川乱歩と論争をした)する木々は,より広い内容をもつものとして新たに〈推理小説〉という語を持ち出した。木々の定義によると,これは〈推理と思索を基調とした小説〉で,〈探偵小説,怪奇小説,スリラー,考証小説,心理小説,思想小説などすべてを〉含むものであった。

 この新しい提唱に対して,用語の混乱を招いたという非難も加えられたが,その後の実情を見ると,日本でも外国でも〈もっぱら論理的操作によるなぞの解決〉を扱う狭い小説から,より広いものへと変わってきたことは否定できない。日本では〈ミステリー(小説)〉という名称も用いられているが,原義の〈なぞ〉の解明より広い小説,すなわち怪奇・幻想小説はもとより,スリラー・冒険・スパイ小説をも含み,〈推理小説〉以上に漠然とした用語である。英語圏においても,detective novelは戦後の多種多様な性格をもつこのジャンルを指すには,あまりにも狭く融通がきかなすぎると考えられ,crime novel(またはcrime fiction。犯罪小説)という語にとって代わられようとしている。以前日本語で〈犯罪小説〉というと,現実に起こった事件を基にした小説を意味したが,現在イギリス推理小説界の長老ジュリアン・シモンズ(1912-94)などが好んで用いるcrime fictionとは,狭いなぞ解きにこだわらず,一般文学作品により近い小説のことを示している。

なぞ解きを扱った文学作品といえば,古くは旧約聖書にまでさかのぼることができるが,一般に推理小説の起源と考えられているのは,イギリスで18世紀後半に流行した〈ゴシック・ロマンス〉である。H.ウォルポールの《オトラント城奇譚》(1764)や,A.ラドクリフの《ユードルフォの秘密》(1794)などでは,超自然現象的な不思議な現象が,結末で論理的に解明され,人間の恐怖心理が分析され,今日の〈スリラー小説〉の先駆となっている。W.ゴドウィンの《ケーリブ・ウィリアムズ》(1794)は殺人事件を一個人が究明し犯人を自白に追いつめる物語である。

 イギリスで発生した〈ゴシック・ロマンス〉はたちまちヨーロッパ大陸,アメリカに渡って大流行し,多くの名作を生み出した。例えばドイツではE.T.A.ホフマンの〈スキュデリー嬢〉(1818),フランスではH.deバルザックの《暗黒事件》(1841)などは,推理小説として十分に通用する。同じ英語圏であるアメリカでは,C.B.ブラウンの《ウィーランド》(1798),《エドガー・ハントリー》(1799)は本格的推理小説と呼べるし,J.F.クーパーのインディアン物語の中には,素人探偵冒険談の萌芽というべきものがある。

 イギリスやアメリカのゴシック・ロマンス,とくに同国人のブラウンから大きな影響を受けたポーが1841年雑誌に発表した短編《モルグ街の殺人》は,彼自身が呼ぶ〈推理小説〉,すなわち本格派探偵小説の起源と呼ぶべき画期的作品である。続く《マリー・ロジェのなぞ》《盗まれた手紙》の全3作で,近代的推理小説のパターンがほとんどすべて実践されてしまった。オーギュスト・デュパンという素人探偵。その友人である語り手。本職の警察がさじを投げた難事件を素人が推理で解決する。読者に事実をすべて提供し,探偵(つまり作者)と読者がフェアプレー精神で知恵比べをする。トリックと思いがけぬ解決。ポーはこのほかに暗号解読の物語《黄金虫》,意外などんでん返しの《お前が犯人だ》,合計五つの短編を発表したが,長編は一つも書かなかった。このほかに推理小説評論が若干ある。

 ポーが試みなかった長編推理小説を,イギリスのディケンズが《バーナビー・ラッジ》(1841),未完の《エドウィン・ドルードのなぞ》(1870)などで,ディケンズの親友W.コリンズが《ムーンストーン(月長石)》(1868)などで実現した。これらの作品では純粋の論理的操作もあるが,それより人間の性格・心理,状況の異常さに力点が置かれ,パズルよりも文学性に特色がある。人間味豊かな警官の推理作業をとり入れている点も,ポーと違った特徴である。

 以上のような土壌の上に,コナン・ドイルの〈シャーロック・ホームズ〉シリーズの花が開くこととなる。この名素人探偵が初登場するのは長編《緋色の研究》(1887)だが,形式的にはポーのデュパンと同じであり,またポーのアイデアをドイルはかなり借用している。しかしホームズ・シリーズが世界推理小説史上不滅の地位を今日なお占めているのは,創始者ポーのやらなかった新機軸を出したからである。例えば1891年以後,雑誌《ストランド・マガジン》に定期的に読切り短編を連載し,日本でいう〈捕物帳〉形式を確立したこと,語り手のワトソンに,ポーの場合見られなかった人間味を添えたこと,なぞ解きの興味だけでなく,時代の風俗や冒険的興味,すなわちディケンズやコリンズが重視した要素をも取り込んだこと,などである。以後ホームズの後継者,亜流は今日に至るまで後を絶たず,推理小説の一つの定型が確立されたのである。

 第1次世界大戦後のイギリス,アメリカで推理小説の黄金時代が築かれた。1920年にA.クリスティの処女作《スタイルズ荘の怪事件》と,F.W.クロフツの処女作《樽》がともに発表されたのが,その幕開きである。クリスティは以後アマチュア探偵ポアロを主人公とした,パズルとトリックに重点を置いた(そのため現実性が希薄と批判されることもある)推理小説を半世紀以上も書き続けた。一方,クロフツの作品は,超人的頭脳に恵まれたホームズ,ポアロ型と正反対の,平凡な警察官や素人が,もっぱら足と根気で試行錯誤を繰り返しながら真相に迫るという,より地味だが現実味あふれるものであった。以後の時代の推理小説を大きく二分するなぞ解き型と現実型の典型例というべきであろう。

 前者,すなわちなぞ解き型の代表としては,イギリスのD.L.セーヤーズ(素人探偵は青年貴族のウィムジー卿),アメリカのバン・ダイン(1888-1939。探偵ファイロ・バンス),エラリー・クイーン(探偵エラリー・クイーン),アメリカ生れでイギリスに帰化したJ.D.カー(探偵フェル博士)などがある。おもしろいことに,この種の小説の作者には主人公たる探偵と同じようなアマチュアが多い。中世文学研究家(セーヤーズ),美術批評家(ハンティントン・ライト,筆名バン・ダイン),聖職者(M.R.A.ノックス),詩人(デイ・ルイス,筆名ニコラス・ブレーク)などが,余技として第一級の推理小説を発表している。

 デュパン以後の素人探偵が,あまりにも人生をゲーム視しすぎ,鼻につくほどの知性やペダンティズムを示すのに不満な現実派は,市井の泥沼で手足を汚すことを迫られる現職警官や素人探偵を主人公に置く。とくに社会不安が深刻になってきた1930年代から,タフな神経と肉体を持つ一匹狼が巨大な社会組織に立ち向かうという,いわゆる〈ハードボイルド〉小説,例えばD.ハメット,E.S.ガードナー(1889-1970),R.チャンドラー,ロス・マクドナルド(1915-83)など,アメリカ独特の作家の作品が広く世界中で歓迎され,同傾向の作家が各国に出現した。この種の小説の特色は,感情におぼれない,とくに女性の魅力に動かされない男の強烈な個性と,心理より行動に重点を置く簡潔な口語的文体である。また個人の警官より集団としての警官を強調すれば,エド・マクベーン(1926-2005)の作品である〈87分署〉シリーズや,J.J.マリック(本名ジョン・クリーシー,1908-73)のロンドン警視庁を舞台とした作品群,ペール・バールー(1926-75)とマイ・シューバル夫妻のストックホルム警視庁〈マルティン・ベック〉シリーズなど,〈警察小説〉と呼ばれるものとなる。

 これまでイギリス,アメリカを主として述べてきたのは事実優れた作品のほとんどが英語で書かれたからであるが,上にあげたスウェーデンの作品のように,他の国に傑作がないわけではない。フランスは特筆すべき存在で,19世紀のエミール・ガボリオ(1832-73)の《ルコック探偵》(1869)ほか同じ探偵を主人公とする諸作,密室殺人の古典的傑作であるガストン・ルルー(1868-1927)の《黄色い部屋》(1907),本格推理小説とは呼べないが数多くのトリック操作で日本にも有名なM.ルブラン(1864-1941)の〈アルセーヌ・ルパン〉シリーズなどを生み出している。ジョルジュ・シムノン(1903-89)の〈メグレ警部〉シリーズも忘れることができない。概してフランスの推理小説はなぞ解きパズルよりは,人間心理や物語性,社会・風俗に重点を置いている。

明治時代の黒岩涙香などの翻訳・翻案によってイギリス,アメリカ,フランスの探偵小説(と当時は呼ばれていた)が日本に紹介されたが,創作の優れた作品といえば,大正期の谷崎潤一郎《途上》(1920),芥川竜之介《藪の中》(1922),佐藤春夫《女誡扇綺譚》(1925)などを待たねばならない。これらの作家はもちろん推理小説的作品だけを書いたわけではないが,後に日本最初の推理小説作家と呼ばれた江戸川乱歩,横溝正史(1902-81)らは,上記の作品によって大きな刺激を受け,とくに怪奇,幻想の特色を受け継いだのであった。

 1920年1月に創刊された雑誌《新青年》は,編集長の森下雨村の好みもあって,はじめから海外探偵小説の翻訳・紹介をその特色としたが,同時に新人の創作を募集した。これに応じて投稿され,1923年4月号に掲載された江戸川乱歩の短編《二銭銅貨》は,日本推理小説史上画期的な作品で,以後彼は名作を次々と発表,日本において〈探偵小説作家〉と呼ばれることのできるものの第1号であると同時に,第一人者とも認められるようになった。《新青年》は50年廃刊まで,ほかに横溝正史,水谷準(以上2人は後に編集長をつとめた),甲賀三郎,大下宇陀児(うだる),小酒井不木(ふぼく),角田喜久雄,夢野久作,海野十三,小栗虫太郎,木々高太郎(林髞),久生十蘭(ひさおじゆうらん)などを生み出し,第2次世界大戦前の注目すべき推理小説作家は,すべて《新青年》が育てたといっても過言ではない。

 彼らの作品のすべてが厳密な意味における推理小説であったわけではないし,外国作品のアイデアや文体の借用があったことも否定できない。これに反して日本独自の特色を生かしたのが時代推理小説,すなわち〈捕物帳〉である。シリーズとしての発表形式は前述のとおり《シャーロック・ホームズ》に負うところが多いが,過去の時代の雰囲気,考証などの点では,このジャンルの創始者,岡本綺堂作の《半七捕物帳》(第1作は1917年1月《文芸俱楽部》に発表)が最初にして最高の模範例となっている。以後,野村胡堂(銭形平次),佐々木味津三(右門),横溝正史(人形佐七)など数多くの作家が試みたが,推理小説の枠内に収まりきらない作品も多くある。

 第2次世界大戦中の空白が終わって,戦後の日本は空前の最盛期を迎えた。〈推理小説〉という語が新しく導入されたことはすでに述べたが,生み出される作品の性格も戦前とは比較にならないほど多種多様になった。《新青年》に代わって,1946年3月創刊の《宝石》が,主導的役割をつとめる雑誌となり,江戸川乱歩は創作はほとんど絶ち,評論活動と新人発掘に専念した。そのため山田風太郎,高木彬光,鮎川哲也以下,多くの新人が登場し,今日のブームを築き上げた。作品の性格も本格推理だけでなく,ハードボイルド,忍法帳,SF,ショートショート,ドキュメンタリーなど,海外の作品におくれをとらない。

 特筆すべき現象が二つある。第1は,従来確固として存在していた〈純文学〉と〈推理小説〉の間の境界線が消えたことである。純文学作家が次々に推理小説に筆を染め,松本清張や水上勉のように爆発的人気を呼び,推理小説でデビューした作家が一般の文学賞を取ることも珍しくなくなった。第2は,女性の目ざましい進出である。戦前は推理小説の女性愛読者は少なく,女性作家は皆無に近かったが,57年仁木悦子が応募した《猫は知っていた》が第3回江戸川乱歩賞を得てから,続々と女性による傑作が発表され,この点でもイギリス,アメリカの水準に達したといってよい。女性読者の数も松本清張の《点と線》(1958)の驚異的ブーム以後,飛躍的に増大しつつある。この二つの現象は今後も変わることなく続くと考えられる。
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百科事典マイペディア 「推理小説」の意味・わかりやすい解説

推理小説【すいりしょうせつ】

主として犯罪について,その犯人,動機,方法,日時などのなぞを読者にも推理させるような仕方で叙述した小説。探偵小説,ミステリー(小説)とも。18世紀後半イギリスから流行した〈ゴシック・ロマンス〉の影響を受けたE.A.ポーの《モルグ街の殺人》(1841年)がその最初とされ,名探偵シャーロック・ホームズの登場するC.ドイルの諸作で一つの定型を確立した。第1次大戦後,主にアメリカ,イギリスで,A.クリスティー,F.W.クロフツエラリー・クイーン,J.D.カーなどが出て黄金時代を迎えた。日本では第2次大戦前までは探偵小説と称されることが多く,明治初期に黒岩涙香による欧米作品の翻案に始まり,大正期に《新青年》を舞台に,江戸川乱歩横溝正史らが活躍。昭和に入って甲賀三郎小栗虫太郎久生十蘭らが輩出した。また時代推理小説,〈捕物帳〉も書かれた。第2次大戦後は一種の推理小説ブームが生まれ,ジャンルのひろがりや女性作家の進出がめざましい。
→関連項目黒岩重吾ゴシック・ロマンス大衆文学ハードボイルド松本清張

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「推理小説」の意味・わかりやすい解説

推理小説
すいりしょうせつ

謎解きに重点をおく小説。謎の中心である犯罪に重点がおかれる犯罪小説や,アーサー・コナン・ドイルなどの,犯罪がだれによって,いかなる動機,方法によって行なわれたかの推理に重点をおく探偵小説,チャールズ・ジョン・ハファム・ディケンズなどの,謎とその解明よりも謎が当事者に及ぼす影響に重点をおくものなど種々の類型を含む。特にアメリカ合衆国とイギリスで盛んで,本格的なものはエドガー・アラン・ポーに始まる。初期の古典的な例はドイルで,そこから科学的調査を主とするイギリスのリチャード・オースティン・フリーマンの一派と,犯罪心理を追求するギルバート・キース・チェスタートンやアガサ・クリスティの一派が生まれた。2度の世界大戦はウィリアム・サマセット・モームが著したようなスパイ小説を生み,アメリカではダシール・ハメットが創始したハード・ボイルド派が人気を得て,影響力をもつようになった。日本における推理小説の確立者は江戸川乱歩で,第2次世界大戦後は専門誌『宝石』が創刊され,木々高太郎高木彬光横溝正史らが活躍した。また週刊誌や中間小説誌(→中間小説)が多数創刊された 1960年代には,松本清張水上勉有馬頼義らが社会派の推理作家として活躍し,鮎川哲也,仁木悦子,佐野洋らも独自の作風を示した。以降も推理小説の人気は根強く,1970,1980年代には森村誠一,西村京太郎,赤川次郎,島田荘司,土屋隆夫,夏樹静子,泡坂妻夫,逢坂剛らが,1990年代には高村薫,宮部みゆきら多数の作家が活躍した。

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