改訂新版 世界大百科事典 「ドゥジーンツェフ」の意味・わかりやすい解説
ドゥジーンツェフ
Vladimir Dmitrievich Dudintsev
生没年:1918-98
ロシアの作家。ハリコフ州クピャンスクの出身。1940年モスクワの法科大学を卒業すると同時に赤軍に召集された。第2次世界大戦中のレニングラード攻防戦で負傷し,シベリアの軍検察局に勤務した。これより先の1933年から文筆活動を始め,46年から51年にかけて《コムソモールスカヤ・プラウダ》紙の記者として主としてルポルタージュを書いた。52年に短編集《七人の勇士のもとで》を発表しているが,彼が一躍ソ連文壇に知られるようになったのは56年に長編《パンのみによるにあらず》を発表してからである。聖書中の語句を題名にしているのもソ連の作品として異色だが,第20回共産党大会後のつかのまの〈雪どけ〉期に発表された作品で,ソビエト社会の否定面を大胆に描き出し問題となった。論争の末,最終的には公式的に作品も否定された。その後は《新年のお伽話》《短編集》(ともに1963)などを発表したほか,翻訳の仕事に携わっているという。しかし,いつの日か《パンのみによるにあらず》は再評価されるであろう。
執筆者:木村 浩
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報