改訂新版 世界大百科事典 「ノース規制法」の意味・わかりやすい解説
ノース規制法 (ノースきせいほう)
North's Regulating Act
イギリス政府が東インド会社とそのインド支配を統制し監督する体制を確立するために1773年に制定した法律。商業貿易会社として出発した東インド会社は,プラッシーの戦やディーワーニーdīwānī(徴税権)の獲得以降,しだいにインド統治機関としての機能ももつようになり,また社員の綱紀粛正と会社の経営改善も大きな問題となっていた。こうした事態に対応するためにつくられたこの規制法は,株主総会の投票権を持株最低1000ポンド,かつ1年以上の保有者に限定し,取締役の任期を4年に延長することによって,インド帰り社員の取締役会に対する影響力を制限し,その運営の安定をはかった。他方,ベンガル管区の民政と軍事を担当するために総督Governor-Generalと参事会Councilを創設し,総督,参事会にマドラス,ボンベイ両管区の軍事と外交に対する監督権を与えた。総督,参事会は,ロンドン本社の取締役会の命令に従うものとされ,取締役会は,税務,軍事,民政に関する総督,参事会からの業務報告をイギリス政府に報告することを義務づけられた。こうして,イギリス政府がインド統治を監督する体制が始まることになった。
執筆者:柳沢 悠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報