株式会社の最高意思決定機関。出資者である株主が集まり、取締役の選任など経営に関わる重要事項を決議する。株主は株式の保有比率に応じて与えられる議決権を行使し、多数決などで賛否を決める。定時総会は、一般的に事業年度末から3カ月以内に開く。日本では3月期決算の企業が多いため、6月下旬に開催が集中する傾向がある。
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議決権を有する株主によって構成され、株式会社の最高意思決定機関であり必要的機関である。会議体の機関であるから、常置の機関ではなく、定時総会または臨時総会として招集され開催される。定時総会とは毎事業年度ごとに定時に開催される総会であり、おもに計算書類の承認、役員の改選などが行われる。臨時総会とは必要がある場合にいつでも開催することができる総会であり、たとえば、事業再編の承認、買収防衛策導入の必要がある場合に開催される。
[戸田修三・福原紀彦]
株主総会は会社内部において会社の意思を決定するだけで、対外的執行をなすものではない。その権限は、旧商法時代では商法および定款に定めた事項に限定されていた(旧商法230条ノ10)。しかし、2005年(平成17)制定の会社法においては、取締役会非設置会社と取締役会設置会社とではその権限が異なることとした。
〔1〕取締役会非設置会社 株式会社に関するいっさいの事項について決議することができる(会社法295条1項)。所有と経営の分離がかならずしも徹底しておらず、その結果、総会権限が大きく、株主の権利が相対的に強化されているからである。
〔2〕取締役会設置会社 会社法または定款に定めのある事項に限定されている(同法295条2項)。設置された取締役会に経営の意思決定権限を大幅に委譲しているため、株主総会の権限は改正前と同様に制限されているからである。
[戸田修三・福原紀彦]
〔1〕決定 株主総会が開催されるには、法定の招集手続を経る必要がある。まず、原則として取締役(取締役会設置会社では取締役会)が決定し(会社法298条1項・4項)、取締役が執行する(同法296条3項)。少数株主によって招集請求がなされることもある(同法297条4項)。
〔2〕招集通知 公開会社の場合には、会日の2週間前までに、総会の日時・場所・議題・書面または電磁的方法による議決権行使を可能とする場合にはその旨(同法298条2項)等を、記載または記録した書面または電磁的方法によって通知しなければならない(同法299条)。非公開会社の場合には、書面または電磁的方法による議決権行使を可能とする旨を定めた場合を除き(この場合には公開会社と同様の手続・方法を要する)、会日の1週間前までに通知を発すれば足りる(同法299条1項)。さらに、その会社が取締役会非設置会社であれば、定款でもって招集通知の期限を1週間より短縮することができ(同法299条1項)、通知の方法に制限はなく(口頭や電話等でもよい)、会議の目的事項の記載または記録を要しない。
〔3〕招集地 どこでもよい。ただし、あまりにも出席しにくい場所にすると、総会決議取消事由にもなりうる(同法831条1項1号)。
〔4〕招集の際の提供書類 取締役会設置会社では、計算書類および事業報告の提供を要する(同法437条)。書面投票・電子投票を採用する株主総会と、議決権を有する株主数が1000人以上の会社の株主総会では、議決権行使書面・電磁的手段および参考書類の交付を要する(同法301条、302条)。ウェブ開示制度を利用し、招集通知と参考書類を送付しないこともできる(会社法施行規則94条・133条1項、会社計算規則161条4項・162条4項)。
〔5〕招集手続の省略 書面または電磁的方法による議決権行使ができる旨定めた場合を除き、議決権を有する株主全員の同意があるときは、招集手続を省略して株主総会を開催することもできる(会社法300条)。議決権を有する株主全員が出席する場合には、招集手続を経ていなくても株主総会を開催することができる。
[戸田修三・福原紀彦]
株主総会の決議要件は、決議事項の重要性に照らし、次の3種類がある。
〔1〕普通決議 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数にあたる株式を有する株主が出席し(定足数)、その出席株主の議決権の過半数をもって決する(会社法309条1項)。定足数は定款で変更できるが、その変更は、取締役・会計参与・監査役の選解任決議では制約があり、総株主の議決権の3分の1未満とすることはできない(同法341条)。法定の普通決議事項としては、取締役等の選任(同法329条)・解任(同法339条)、計算書類の承認(同法438条2項)などである。
〔2〕特別決議 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数にあたる株式を有する株主が出席し(定足数)、その出席株主の議決権の3分の2以上にあたる多数をもって決する(同法309条2項)。定款により定足数は議決権の3分の1までは軽減することができ、また、要件を加重することもできる。法定の特別決議事項としては、会社法309条1号から12号において定められており、第三者に対する募集株式有利発行、監査役の解任、会社の組織変更行為などである。
〔3〕特殊の決議 特別決議よりもさらに厳重な決議方法である。(1)議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもってなす決議(同法309条3項。たとえば、全株式に譲渡制限を付するための定款変更)。(2)総株主の半数以上であって、当該株主の議決権の4分の3以上の多数をもってなす決議(同法309条4項。たとえば、非公開会社で株主の人的属性に基づいて権利内容に差を設ける場合)。
[戸田修三・福原紀彦]
『陣川公平著『これならわかる!「株主総会」のすべて――はじめて行く人のための』(2007・PHP研究所)』▽『中村直人著『役員のための株主総会運営法』(2007・商事法務)』▽『東京弁護士会会社法部編『新 株主総会ガイドライン』(2007・商事法務)』▽『中央三井信託銀行証券代行部編『株式実務株主総会のポイント』全訂版(2007・財経詳報社)』
株主の総意によって会社の意思を決定する,株式会社にとっての必要的機関。株主総会は,定時または臨時に具体的に招集されて成立する会議体であるという点では常置の機関ではないが,株式会社の組織構成上,つねにその存在が予定され欠くことのできないものであり,総会の決定すなわち会社の意思決定となる。株主総会は,出資者である株主全員によって構成される機関として,従来,会社に関するいっさいの事項につき決定できる会社の最高かつ万能の機関とされていた。しかし,株式会社の大規模化にともない,株主の大多数は会社の経営に知識も関心ももたなくなるとともに,複雑な会社の経営は経営の専門家にゆだねざるをえないという,いわゆる〈所有と経営の分離〉という現象に対処すべく,1950年の商法改正で,株主総会の権限は法定事項または定款所定事項に限定され(商法230条ノ10),それ以外の事項は取締役で構成する取締役会の決定にゆだねられている。所有と経営の分離に適合する方向に機関構成を改めることは,アメリカ法,ドイツ法などにもみられる世界的傾向である。もっとも,総会が決定した範囲内では取締役もその決定に拘束され,ことに取締役の選任権が総会にあるから,総会の最高機関性は失われていないが,総会に自身出席する株主はわずかにすぎず,また総会で十分な審議がなされることはまれで,株主総会はますます形骸化する傾向にある。そして,会社の実権は株主総会から取締役会,さらに代表取締役である社長に移っている(いわゆる経営者支配)のが実情である。そこで,81年に株主総会の機能を回復するための改正がなされた(232条ノ2など)。
株主総会は,意思決定機関であるから,直接に対外的執行をなしえない。総会の決議事項として法定されているのは,取締役などの会社役員の任免を除いては,主として会社の基礎ないし営業に根本的変動を生ずる事項(定款変更,資本減少,解散,合併,営業譲渡など)である。従来は法定事項とされていた計算書類の承認は,現在,会計監査人の監査を受ける大会社では会計監査人および監査役会の適法意見があるときは取締役会によることになっている(株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(略称,商法特例法)16条1項)。
株主総会は,会議体の機関であるから,招集することを要する。総会は,各決算期ごとに一定の時期に招集することを要する定時総会(商法234条)と,必要がある場合に随時招集される臨時総会(235条)がある。招集権者は原則として取締役会であって(231条),取締役会において総会の日時・場所・議題などを決定し,代表取締役がこれを執行する。そして,これらの事項を記載した通知を各株主に対して会日より2週間前に発送しなければならない(232条)。なお,例外的に少数株主が招集権限を有する場合があるが(237条),81年の商法改正で,新たに,少数株主に一定の事項を会社の招集する総会の議題とすることを請求する権利と,自己の提出する議案の要領を総会の招集の通知に記載することを請求する権利が認められている(232条ノ2)。
各株主は,総会に出席して質問し意見を述べる権利,および決議に加わる権利すなわち議決権を有する。議決権の数は1株につき1個であり(241条1項),議決権は代理人によっても行使できる(239条2項)。また,会計監査人の監査を受ける株主が1000人以上の大会社では,書面投票の制度が認められている(商法特例法21条の3)。
総会の議事運営の権限と職責は議長にある(商法237条ノ4)。取締役および監査役は株主から議題に関し質問があったときは説明しなければならない(237条ノ3)。議題は招集の通知に掲げられた事項に限られるのを原則とするが,議長の選任や総会の延期・続行はその場の必要に応じて決議できる(237条ノ4-1項,243条)。議事については,議事録の作成を要する(244条)。決議は多数決によってなされるが,その要件は決議事項によって異なる。普通決議は,発行済株式総数(ただし240条参照)の過半数に当たる株式を有する株主が出席し(定足数),その出席株主の議決権の過半数をもってなす決議で,法律または定款に別段の定めがないかぎり,総会の決議はこの方法による(239条1項)。定足数は定款で変更することができ(ただし256条ノ2参照),実際にも多くの会社は定足数を排除している。特別決議は,定足数は普通決議と同じであるが,出席株主の議決権の2/3以上の多数をもってなす決議である(343条)。この場合,定款で定足数を軽減または排除できない。定款変更,資本減少などの重要事項についてはこの方法による。なお,総会の形骸化の原因の一つとなっている総会屋に対処するため,新たに,株主の権利の行使に関し会社は何人に対しても財産上の利益を供与してはならない旨の規定が設けられ(294条ノ2),これに違反した場合の責任・罰則も定めている(266条1項2号,497条)。
総会の成立手続または決議の内容に瑕疵(かし)があって,決議の効力を争う場合,決議を前提として多数人との間に各種の行為がなされるため,一般原則にゆだねることは妥当でない。そこで,法律関係を画一的に確定するため,決議の取消し(247条以下),無効確認および不存在確認(252条)の3種の訴えの制度を設け,瑕疵の主張方法,判決の効力などにつき特別な扱いをしている。
執筆者:青竹 正一
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(高橋宏幸 中央大学教授 / 2007年)
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出典 M&A OnlineM&A用語集について 情報
…すなわち,48年に株金分割払込制度を廃止したのに続いて,50年にはアメリカの制度を広範にとり入れた大改正が行われた。それは,(1)授権資本制度等を採用することにより資金調達の便宜を図る,(2)株主総会の権限を縮小すると同時に取締役会制度・監査役制度を改正して会社運営機構を合理化する,(3)少数株主権の強化,取締役の責任の厳格化等により株主の地位の強化を図る,ことを主眼点とするものであった。その後の株式会社法の改正としては,62年の計算(企業会計)を中心とする商法改正,資本自由化を前にした66年の株式の譲渡制限・譲渡方法等に関する改正,粉飾決算にからむ大型倒産を機に監査役の地位強化と会計監査人制度の導入を柱とした74年改正等が行われたが,74年改正の直後から,会社法の全面的見直しおよび改正の作業が始まり,81年に改正が実現した。…
※「株主総会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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