朝日日本歴史人物事典 「ハウカセ」の解説
ハウカセ
江戸前期の蝦夷地の5大勢力のひとつの首長。石狩川流域を本拠地とし,その政治的勢力範囲は南はオタルナイ(小樽),北はマシケ(増毛)方面にまでおよんでいた。寛文9(1669)年のシャクシャインの戦当時,「石狩の蝦夷頭」「石狩狄大将」「石狩の惣大将」などと称されたが,戦いにおいてはあくまで武装中立を保ち続けた。またアイヌ民族の蜂起に対する松前藩の制裁措置である蝦夷地への交易途絶に対しても,一向に構わないと豪語したことでも有名である。ハウカセにとっても寛永年間(1624~44)から松前藩が強力に推し進める商場知行制(松前藩が家臣に知行として特定地域のアイヌ民族との独占的交易権を与える制度)の蝦夷地内貫徹は無関係ではなかったはずである。また,ハウカセは近江八幡出身の金太夫という娘婿に軍事顧問的役割をさせており,蝦夷地への武器輸出が不可能になったシャクシャインの戦の時点で40~50挺もの鉄砲を所持していたといわれる点などから,松前藩のほかにも和産物輸入ルートを確保していたとも考えられる。ハウカセの存在はやがて「惣大将」層を否定し松前通商圏内に包括していこうとする松前藩との最後の相克ともいえる。<参考文献>海保嶺夫『近世蝦夷地成立史の研究』,喜多村校尉編『津軽一統志』(『新北海道史』7巻)
(海保洋子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報