日本大百科全書(ニッポニカ) 「バルナ遺跡」の意味・わかりやすい解説
バルナ遺跡
ばるないせき
Varna Necropolis
ブルガリア北東部、バルナ市南西郊、バルナ湖北岸にある金石併用時代後期(前4500~前4000)の墓地遺跡。1972年秋に偶然に発見され、1981年末までに204基の墓が発掘された。大量に黄金製品(総重量6キログラム)と銅器が発見されたことで知られ、メソポタミアやエジプトとほぼ同時か、あるいはむしろ古い時期に、バルカン半島にかなり高度の文化が発達していたことを示す証拠として、注目されている。墓の構造はすべて同じで、単純な土壙墓(どこうぼ)であるが、なかに人骨を伴わない墓が35基ある。人骨を伴わない墓は平均して副葬品が豊かで、かならず金製品と骨製偶像、貝小玉の首飾りが発見され、土製仮面も三例出土している。これらは人間の墓ではなく、祖先神を祀(まつ)った墓と思われる。一方、人骨を伴う墓は副葬品が貧弱であるが、例外的に一基の墓では多くの黄金製品とともに、金の柄(え)をもつ石斧(せきふ)や銅の槍(やり)先が発見され、首長の墓とみなされている。
[林 俊雄]