日本大百科全書(ニッポニカ) 「バン・ボークト」の意味・わかりやすい解説
バン・ボークト
ばんぼーくと
A. E. Van Vogt
(1912―2000)
カナダ生まれのアメリカのSF作家。バン・ボートともよばれる。1939年『アスタウンディングSF』誌に『宇宙船ビーグル号の冒険』の第一話にあたる『黒い破壊者』を発表してデビューした。アシモフ、ハインライン、スタージョンらとともに40年代のいわゆる『アスタウンディングSF』の黄金時代を築いた作家の一人。作品には冒険SFが多いが、娯楽性に徹した一時代前のスペース・オペラとは異なって知的水準が高く、プロットも複雑で、メタフィジカル・スペース・オペラといわれている。タイム・トラベルとスペース・トラベルを組み合わせた壮大な宇宙ドラマ『イシャーの武器店』(1949)と『武器製造業者』(1943)、『非(ナル)Aの世界』(1948)と『非Aの傀儡(かいらい)』(1949)、ミュータント・テーマの『スラン』(1940)、短編集に『終点:大宇宙』(1952)などがある。
[厚木 淳]
『沼沢洽治訳『イシャーの武器店』『武器製造業者』『非Aの傀儡』(創元推理文庫)』▽『沼沢洽治訳『宇宙船ビーグル号の冒険』(創元SF文庫)』