日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハインライン」の意味・わかりやすい解説
ハインライン
はいんらいん
Robert A. Heinlein
(1907―1988)
アメリカのSF作家。アナポリスの海軍兵学校卒業後、カリフォルニア大学大学院で数学と物理学を専攻。初めてSFを発表したのは1939年だが第二次世界大戦で中断、本格的作家活動は戦後から始まる。現在までに『太陽系帝国の危機』(1956)、『宇宙の戦士』(1959)、『異星の客』(1961)、『月は無慈悲な夜の女王』(1967)の四作品でヒューゴー長編小説賞を4回受賞しており、これは彼の人気と実力を物語る輝かしい記録といえよう。彼の描く未来世界は、つねに現代の科学と社会の発展的延長線上で正確にとらえられ、不合理な飛躍がないところに迫力あるリアリティーが生まれている。作品の時代や舞台は21世紀から23世紀の近未来で、地球、月、火星といった比較的身近な惑星や衛星であることが多く、また同一テーマの反復を極力避けて、つねに新しい構想のもとに創作しているのも得がたい特色である。このほかおもな作品に、未来史シリーズの第一巻にあたる短編集『月を売った男』(1953)、タイム・トラベル・テーマの『夏への扉』(1957)、『愛に時間を』(1973)などがある。
[厚木 淳]
『井上一夫訳『異星の客』(創元推理文庫)』▽『矢野徹訳『月は無慈悲な夜の女王』(ハヤカワ文庫)』