日本大百科全書(ニッポニカ) 「バールラハ」の意味・わかりやすい解説
バールラハ
ばーるらは
Ernst Barlach
(1870―1938)
ドイツの劇作家、彫刻家。ホルシュタイン州のベーデル生まれ。ハンブルクとベルリンを拠点に彫刻家として出発し、1906年のロシア旅行から大きな影響を受け、独自の芸術様式をみいだすに至った。これを契機に文学的創作も開始され、10年以降は小村グュストローに引きこもり、芸術活動に専念した。ドイツ表現主義を代表する異色の芸術家とされる。『死せる日』(1912)、『ノアの洪水』(1924)、『蒼白(そうはく)のボル』(1926)など八編の戯曲は、いずれも神秘性と幻想性をたたえ、「暗く大地的な」人間がみえざる新しい神に向かう過程を描いている。ほかに小説や自叙伝などの散文作品もある。『女乞食(こじき)』(1907)、『再会』(1926)などに代表される彫刻作品は木彫りやブロンズ像を主とし、重い運命を担う人間存在の深みを簡潔・重厚なフォルムで表現している。
[芦津丈夫]
『芦津丈夫訳『ノアの洪水』(『現代世界演劇4』所収・1971・白水社)』